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カンディンスキーと青騎士 兵庫県立美術館 (4)

  さて、カンディンスキーと一緒に活動した他の画家についても今回は展示があった。そのひとりがフランツ・マルクである。
  貴族出身の風景画家の子としてカンディンスキーよりも14年後にミュンヘンに生まれたマルクは、人間よりも動物を愛する孤独な青年であった。19歳のときの兵役体験から馬の純粋な生命力に感動し、ミュンヘン美術院の風景画主体の教育に飽き足らない日々を過ごしていたマルクは、パリを訪問時にゴッホの絵に深く感動し、色彩の使い方に大きく影響されたという。マルクにとって、1909年のカンディンスキーとの出会いは運命的であったようだ。以後、青騎士の同志として、第一次大戦で1906年、36歳の若さで死ぬまで、ほとんど動物ばかりを描き続けた。「牛、黄―赤―緑」(1911) は、マルクが結婚した直後ころに描いた幸福感、高揚感を表す明るい絵である。彼にとって、青は厳しく精神的で男性的、黄色はやさしく陽気で女性的である、という。なによりも、画面中央にのびやかに躍動する黄色の雌牛が印象的である。

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  そしてもう一人重要な人物が、アレクセイ・ヤウレンスキーである。ヤウレンスキーはカンディンスキーよりも一年早い1865年、カンディンスキーと同じロシアに生まれ、モスクワで育った。軍人になるつもりで教育を受けたが、16歳のとき絵画の展覧会で絵画に魅了され、以後独学で絵画を学んだという。士官として軍役についたあとも、ロシア帝国美術アカデミーの夜学で絵画を学び続けた。1892年、ヤウレンスキーはこのアカデミーで、すでに「ロシアのレンブラント」ど呼ばれて女流画家として名前を知られつつあったマリアンネ・フォン・ヴェレフキンと出合った。彼女は年下の貧乏帝国士官の才能を認め、信じて、以後長く連れ添い、金銭的にも多大な援助を与えるスポンサーとなった。カンディンスキーとほとんど同じころ、ヤウレンスキーとヴェレフキンは、ミュンヘンに移り、カンディンスキーと知り合った。ヤウレンスキーもゴッホに深く感動し、強い影響を受けて、長らく後期印象派に準じた画風であったという。ヤウレンスキーは、カンディンスキーに影響を与え、ミュンヘン新芸術家協会の創設を指導したという。ヤウレンスキーは、この後、ヴェレフキンやカンディンスキーと衝突・和解・共鳴などを経て、結局青騎士の活動に同志として参加した。しかしカンディンスキーと同様、第一次大戦でロシアがドイツの敵国となり、ヤウレンスキーもドイツを脱出することを余儀なくされた。
ヤウレンスキーの作品は、今回の展覧会では「成熟」(1912) と、他2点が展示されている。後期印象派から導入したクロワソニズムという手法、すなわち太くて黒い輪郭で画面を構成する方式を用いて、力強い表現を実現している。

Ws000060  アウグスト・マッケも、重要な画家である。第一次大戦でわずか27歳で夭逝したこの画家は、20歳代前半ですでにマルクを通じてカンディンスキーの青騎士運動に出会い、短い時間であったが多くの作品を残した。自分の精神に響いたものだけを抽出して描く、という画風で、彼の場合は抽象画ではなく、簡素で鋭い具象画となっている。「遊歩道」(1913) は、具象画ではあるが幸福感に満ちたシュールな雰囲気があり、とても美しい。
  第一次大戦終戦後は、カンディンスキーはふたたびドイツに戻り、バウハウスの教授として後進の育成に勤めつつも創作続け、やがてナチスによってドイツを再び追い出されると、パリに移り、引き続き作品を発表し続けた。私は、カンディンスキーの作品としては、ほとんどの場合、カンディンスキーのさきの大戦後の幾何学的な抽象画を知っているのみであった。カンディンスキーは、若いころにフランスではなくドイツで活動したことで、ドイツ表現主義の流れを汲む造形芸術の影響を受けたことで、内面心理の発現にこだわった独自の抽象表現を達成したのではないだろうか。こうしてカンディンスキーの若いころの具象画、初期の抽象画などを時系列でゆっくり鑑賞できたことは、カンディンスキーを理解するうえで、非常に役立った。
  全作品数は60程度で、決して多すぎるというものではなかったが、カンディンスキーを主に、彼に関わる複数の芸術家、すなわちヤウレンスキー、ヴェレフキン、ミュンター、マルク、マッケ、などの作品も含まれ、密度の濃い展示会であった。鑑賞には予想以上の時間を要して、今回も鑑賞を終えたあとは、ぐったりするほどであった。

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