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三尾公三展「女のいる幻想空間」国立国際美術館

 茨木の実家で土曜日の休日を過ごす機会があり、久しぶりに万国博覧会会場跡の国立国際美術館へ行った。今年の冬は暖冬というが、ときどきかなり冷え込む日があり、その間に比較的暖かい日がはさまっているような気候が続いている。今日は幸い暖かいサイクルに入っているようで、柔らかい冬の日差しが快い晴天である。シーズンオフのためか、万博公園は人けがなく、年末の雑踏疲れを気分転換するには好適である。私が学生であった万国博覧会開催時には、この公園もまだ樹木が植林直後で不自然さがめだち、決して美しい場所ではなかったが、それから四半世紀たった今では、並木も植木もすべてすっかり落ち着いて、広大な土地とともに、豊かで美しい広場となっている。葉が落ちて褐色の地肌を現した並木の樹木の間から、柔らかい太陽が断続的に顔を出す。午後になると急速に陽光に勢いがなくなり、青い空も色がうすくなってゆく。ほんの短い快いひとときとしての冬の昼は、ひよわくこわれそうなだけに、より貴重でいとおしい。
 写真雑誌「フォーカス」の表紙をながらく担当している三尾公三の展覧会「女のいる幻想空間」が催されていた。三尾は美術学校では日本画を学び、のちに洋画に転向したそうで、たしかに画面の質感は日本画を思わせる乾いた落ちつきがある。展示されている絵は、すべてアクリルを使った、写真のようにきわめて写実的な表現である。
 ほとんどの絵は、サブタイトルが示すように、女性が登場するものであるが、ごく少数女性が登場しない絵もある。このなかで「青空」というのが、印象が強かった。真っ青の空にごく少し雲が浮かんでいる。その青空の真ん中に黄色の五寸釘が三本、突き刺さっている。ご丁寧に釘の影まで写実的に描かれている。しかも画面の中央下は、その青空を描いた紙が破ってめくれたように描いてある。実際、見事な真っ青な空をみつめていると、その青空は中空ではなく、空間でさえもなく、美しい絵の具をぬりつめた明るい平面のように感じることがある。その美しい青空を、釘で固定したいと思ったのであろうか。非現実的な絵であるが、実はごく写実的な絵である。これはつまるところ「自然の美」のピンアップなのである。類似の作品として、砂浜にさざ波が寄せている浜辺に、幻想的な女の顔が浮かんでいるような絵がある。美しい自然を眺めていると、ふとそのなかに、なまめかしい女性のイメージが重なることがあるということは容易に理解できる。この作品は、それを、女性のポートレートやヌード写真と同様な、ピンアップとして表現し、扱うところに特徴がある。美しいものと、それに対する女性あるいは性の連想、そしてそれを写真のような平面として切りだしてピンでとめる、というアプローチが、この作家の本領、あるいは常套手段であるらしい。
 彼の絵の多くは、女がまず登場し、さらにレモン、貝殻、ヒトデ、そしてベッド、壁、など、一連の定型パターンが頻繁に現れる。基本的には性的な存在としての女性であり、情事を示唆する構成がベースとなっている。ただ、登場する女性は、すべてエロティックではあるが、思索的であれ、挑戦的であれ、あるいは緊張していようが、弛緩していようが、すべてに共通しているのは、意志的であり、内面的な主張、強さを感じさせる。とくに、眼はしっかり相手を見つめ、毅然としている。男と女の情事において、男は自分が主導権を持っているかのように思いたいのであるが、実は女がずっとしたたかなのだ、とでも言いたいかのようである。
 さらに、よく描かれるポーズとして、女が服を脱ぐ瞬間がある。女が自分の意思で、脱皮し、成長してゆく瞬間を表現しているのだろうか。また、女性はいずれも日本人らしくなく、白人の女優のような容貌に統一されているのも、必要以上の艶めかしさを避け、醒めたしたたかさを表現する手段なのかもしれない。
 比較的初期の作品には、頻繁にビートルズが登場する。彼の絵の、愛情と虚無とがバランスしたような表現は、ビートルズの曲にも共通するように思う。作品群を眺めていると、ビートルズの「レットイットビー」などが頭のなかを自然にめぐる。暖かさ、愛情、性欲、そしてその裏に流れる虚しさ、など、男と女の間に起こりうる感情とその表象の種々の側面を、さっぱりと表現しているように思える。(1993.12.25)

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