2017年11月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    
フォト
無料ブログはココログ

« 「戦後文化の軌跡」展 目黒区美術館 | トップページ | 「拡張するガラス」展 横浜美術館 »

デイヴィッド・ナッシュ展 神奈川県立美術館

 鎌倉の神奈川県立近代美術館で「デイヴィッド・ナッシュ/音威子府の森」展を見た。音威子府はオトイネップと読み、北海道稚内に近い村で、森林資源に恵まれたところであるという。1945年生まれの英国の彫刻家デイヴィッド・ナッシュが、1993~1994年の春・夏・冬の3つの季節をここに過ごし、楢や樺などこの地の森林資源を活用して木造の彫刻を制作した創作プロジェクトの作品を展示したものである。
 2メートル位の大きな二股の樺の木を、「人」の形に切り抜き、切り抜いた中子と、切り抜かれた元の木をならべた「内側/外側」、同じ形のタモの木を、一方はバラバらになるような形に3つの細い破片と、その破片を切り取られた元の木にならべた「飛び散る」、もう一方は互いにつながるように内側から刳り貫いて、それを切り抜いた元の木と並べた「開く」など、簡単な構成ながら深い哲学的イメージを感じさせる作品である。
 原始時代の木の舟を思わせる細長い「楢船/樺船」も、造形は簡単であるが懐かしいような暖かさを感じさせるほのぼのとした作品である。くり抜いた穴の壁を火で焦がしているのは、人間の自然に対する関わりと、その結果としての人間の足跡を表現しているのであろう。
 「器」と題する直径1メートル弱の大きなお碗状の物体を木の立方体の上に載せた作品も、単純でありながら豊かに木の質感の暖かさを伝えている。1~2メートルの大きさの立方体、球、三角体を、一つの面を切り込み、火で焦がした「四角・丸・三角」は、人間の原始的あるいは根源的な生活のなかの基本的な「形」を思わせる。このそばに設置してある約2メートルの高さの「門」は、上半分程度を火で表面を焦がし、十字架状に切り抜きと切り込みをそれぞれ入れた2つの木のかたまりからなる。卵状の2メートル位の丸みを帯びた立体の表面に、いくつもの十字架状の切り込みを火で焦がしていれた「十字形に焦がした卵」もある。これらの十字架は、人間の精神生活の象徴であろうか。
 いずれの作品も、木で象徴される「自然」の暖かさ、火で象徴される「人」の働きかけ、そして相互の自然な関わり、という人間の本源的な存在を感じさせるものである。さらに、殆どの作品は人間の背丈を基準にして約1~2メートルの寸法に作られている。自然と人間の「対等」で身近な関係を表現しているのであろう。
 この作者は、自然のなかの「木」に自然の生命力と人間を取り囲む暖かい環境、自然の愛情を感じとっているように思われる。自然のなかに生きる人間にとって、最初の道具を与えてくれたのは木であった。最初の住居を与えてくれたのも木であったろう。自然と人間の原始的な接点としての、生命を持った「木」というのがこの作者の根本的なモチーフなのだろう。(1995.6.17)

人気ブログランキングへ

« 「戦後文化の軌跡」展 目黒区美術館 | トップページ | 「拡張するガラス」展 横浜美術館 »

美術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1444830/45463085

この記事へのトラックバック一覧です: デイヴィッド・ナッシュ展 神奈川県立美術館:

« 「戦後文化の軌跡」展 目黒区美術館 | トップページ | 「拡張するガラス」展 横浜美術館 »