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「宸翰 天皇の書」展 京都国立博物館 (3)

  やがて南北朝となり、宸翰の書に関しては、後光厳天皇を代表とする北朝の「理性の青」、後醍醐天皇を代表とする南朝の「情熱の赤」としてその美を競い合い、ますます書の文化が展開したという。その後醍醐天皇(1288-1339 在位1318-1339) の「後醍醐天皇宸翰天長印信」(1339) が展示されている。この天皇・上皇の軍事的活躍を知っているからそういう目で見るのかも知れないが、躍動的で力強い筆致は、勇壮な天皇にふさわしいどっしりしたものである。この書を書いたのは後醍醐上皇が崩御するわずか2カ月前であるというが、崇敬する空海の書である「天長印信」を書写したこの書は、まだまだ尋常でないほどの大きなエネルギーと、空海への深い追慕を感じさせる。

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   室町・戦国の時代を経て、近世になる。ここで注目は後陽成天皇(1571-1617在位1586-1611) と、その子であった後水尾天皇(1596-1680 在位1611-1629) である。
  後陽成天皇の「仮名文字遣」(1597) は、とても達者な書である。そして大書「竜虎」と「梅竹」(16-17世紀) は、見事としか言えないような作品である。勇壮に天空を駆けめぐる龍、鋭い爪を蓄えた太い脚で大地を踏みしめて身構えて長い尻尾を立てる虎、枝と花を広げ芳醇な香を振りまくような梅、まっすぐに力強く屹立する竹、ととても豊かな表情と雰囲気を感じる良い書である。

Photo
  後水尾天皇の「後水尾天皇宸翰覚書」(1654) は、ゆったりと伸びやかに筆を走らせた書である。繊細で優美な作品である。父である後陽成天皇とは不和で、将軍秀忠、家光とも軋轢が多かった後水尾天皇だが、比叡山を借景した美しい庭を持つ円通寺を創建するなど、芸術や文芸に秀でた天皇であったことを、窺わせるような書である。

7_3   時代が下り、大正天皇の大書「一行書 仁智明達」(19-20世紀) も良い書である。明治天皇の勇壮なイメージとの対比からか、とかくの評判があった天皇であったが、近年その人柄や実績を見直されている天皇である。この書を見ると、なかなかの書家であったことがわかる。
  昭和天皇の大書「無相」(1959) も展示されている。妙心寺の開祖へ送る諡号として書いた書であるが、どっしりと力強い筆致は、昭和天皇の秘めたエネルギーを感じる。

  天皇の御手による書など、日常的にはとても直接観賞することはできない。我々庶民にとって、今回の展示会はめったにない大きなチャンスであり、それを存分に堪能できた。若いころには思いめぐらすこともなかったが、こうしてわが国に1500年以上にわたって連綿と続く歴代の天皇が、さまざまな政治的・社会的状況を乗り越えて天皇としての研鑽を積み、こうして貴重な文化的遺産を残したことを、あらためて思った。(完)

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