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リヒテンシュタイン展 京都市立美術館(5)

  最後のコーナーが、リヒテンシュタイン家のコレクションのトピックでもあるルーベンス・コレクションである。Photo
  コーナーの冒頭に、ルーベンスの愛娘であったクララを描いた「クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像」(1616) がある。クララはルーベンスの最初の娘であった。この絵は、本展覧会のポスターやチラシに採用されているが、実物の油彩を眺めると印象ははるかに強烈で、その丹念な筆致と静かな迫力に引き込まれる。一筆一筆に画家の誠心誠意が込められ、なにより娘に対する深い愛情が注がれている筆致である。その父のさまざまな思いに応えるかのように、描かれたクララはわずか5歳だが、幼子・少女というより、しっかりしたひとつの人格をもつ女性の表情として立ち現れる。生命感にあふれ、父を深く信頼し、聡明・利発で、まっすぐにものおじせずに正面をみつめている。クララは、この7年後、わずか12歳で夭折してしまったという。
   「マルスとレア・シルヴィア」(1616) がある。これはローマの建国伝説を題材にした絵画である。王族の娘シルヴィアは、父が弟に王位を簒奪され、娘の子が王位を奪還するのを恐れたその弟(シルヴィアの叔父) から子供を産めない巫女とされた。しかしシルヴィアの美貌に恋い焦がれたローマの軍神マルスは、シルヴィアが眠っている隙に忍び寄って迫った。画面ではシルヴィアは驚いて引いているが、マルスとシルヴィアを引き寄せようとするキューピッドの存在は、二人が結ばれることを暗示している。果たしてシルヴィアは懐妊し、双子の息子ロムルスとレムスが誕生する。この双子の息子たちは、ティベリス川に流されて親と離ればなれになり、やがて狼に拾われ育てられる。成長した双子は、ローマの建国を果たす。とても力強くダイナミックな画面構成、たくましくまた美しい人物の描写、瞬間の表情を的確に表現する顔の描写、など部分も全体も、ルーベンスの巧みさを遺憾なくあらわす名品である。2_2

  展示の最後に「キリスト哀悼」(1612) がある。ルーベンスは、この同じタイトルで多数の作品を描いたというが、この作品はとりわけ大型の作品であるという。処刑されて死んだキリストを抱き寄せ、嘆く聖母マリアやそのとりまきの人たちを、宗教的な荘厳さではなく、きわめて人間的な印象でリアルに表現している。ルネサンスを過ぎた時代であればこそかも知れないが、ここではキリスト教の題材ながら、生身の人間の感情・愛情がとても率直に表現されている。こうしたすぐれて人間的・人情的な絵画は、これ以後のキリスト教の普及に、むしろ大きく貢献し得たのではないだろうか。仏教などでは、こうしたごく人間的な描写による宗教画というのがあまりないように思う。
  せっかくの機会であり、一度は見ておこうとは考えていたが、正直なところルネサンスからバロックの絵画ということで、そんなになじみ易くないだろう、と思っていた。しかし実際に90点近くの作品を眺めてみると、さすがにヨーロッパの超一流の作品ばかりを観ることができ、いずれの作品も印象が深く、とても充実した鑑賞であった。[完]

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