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「重信房子、メイ、足立正夫のアナバシス、そして映像のない27年間」「映画をめぐる美術」展(中)

  エリック・ボードレール(1973年 アメリカ・ソルトレイクシティー生まれ) は、パリに在住して活動する映像芸術家で、かねてより重信房子などの日本赤軍に関する作品を発表しているという。今回の作品は「重信房子、メイ、足立正夫のアナバシス、そして映像のない27年間」というもので、若松孝二と足立正夫の作品のシーン、若松孝二やエリック・ボードレール自身が撮影したレバノン、とくに内乱で荒廃したベイルート近郊の画面と、重信メイ・足立正夫のナレーションで構成される66分の長編である。福岡生まれの足立正夫は、日本大学芸術学部を出て若松孝二のグループに入り「ピンク映画」を撮る。折しも1968年ころから大学扮装、安保闘争、ベトナム反戦運動などの反体制運動が活発となり、足立も「ピンク映画」を通じて反体制的な作品を続けて制作した。一方重信房子は、学生運動をしていたが、1970年の赤軍派の日航機よど号ハイジャック事件で幹部の多数が北朝鮮に閉じ込められて不在となり、赤軍派の後継指導者として台頭するようになる。過激な行動で社会的に孤立し、暴力闘争が一層過激さを増し、武器盗難、銀行強盗、交番襲撃、爆弾事件などを展開するようになった。行き詰まりを感じた重信房子は、グループ戦略を国際化に転身すべきと主張して、逮捕歴のない同志であった奥平剛士と結婚してハネムーンを装ってベイルートに活動を移した。重信房子はここで、パレスチナ人民解放戦線(PFLP) と合流することになった。
  足立正夫脚本・若松孝二監督の映画「性賊 セックス・ジャック」は、カンヌ映画祭で受賞を果たし、授賞式に参加した足立と若松は、カンヌからの帰途ベイルートに滞在、レバノンでの通訳兼ガイドとして雇用した重信房子と知り合う。こうして若松と足立は、パレスチナ闘争に関するドキュメンタリーの撮影を始めた。
  そのころ日本では1972年の榛名山の内ゲバ・総括による赤軍派内部闘争・メンバーのリンチ殺人、そしてそこから逃げ延びた連合赤軍メンバーによる浅間山荘事件をひき起こし、日本での連合赤軍はほぼ壊滅した。
  1973年重信房子は、パレスチナ兵士の子を出産し、メイと名付けた。それ以後も「日本赤軍」は2度の日航機ハイジャック事件、シンガポールでのシェル石油精製施設破壊未遂、クアラルンプルのアメリカ・スウェーデン両大使館占拠事件、などを引き起こした。1997年には、足立正夫が岡本公三などとともに逮捕され、2000年重信房子は大阪で逮捕された。
  この映像作品は、全体のトーンとしてパレスチナ人民解放戦線(PFLP) や日本赤軍に同情的でサポーティブであり、登場する重信メイも自らの困難な状況を訴えつつも、母の立場を尊重し、活動の正当性を主張している。
  彼らが無私の純粋な心情で真剣に活動しただろうこと、および重信母子の親愛の感情などは十分理解できる。しかし、普通の市民であるわれわれから客観的に見れば、当事者たちは真剣かも知れないにしても、結局暴力で重大な罪を犯して多数のひとびとを殺傷し、その命懸けの行動はPFLPに都合のよいように利用されただけだったのである。
  私自身が近い世代であり、当時の雰囲気が実感としてわかる立場でもある。当時は、ともかく政治や社会になんとかして問題を見つけ出して批判し、行動することが求められる雰囲気があった。直接自分自身が不満を感じるわけではなくとも、政治の問題、社会の問題を発見して批判しないことが罪として責められるような雰囲気であった。しかし現実の政治は、それぞれの個人が思い描く理想やアイデア・イメージだけでは成立せず、説得・妥協や漸進がきわめて重要であることを今では理解する。短兵急で一方的な判断と行動は、行動の当事者のみならず、周囲に与える悪い影響が甚大であることを、改めて思う。作品として、長くて冗長で退屈な映像だが、無意味ではない。

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