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円熟からさらなる展開へ 竹内栖鳳展 京都市美術館(4)

  栖鳳は、50歳代以降はわが国の画壇の頂点に登り詰めて名実ともに指導的立場となり、上村松園や西山翠嶂をはじめ、西村五雲、土田麦僊、小野竹喬、池田遙邨、橋本関雪など多数の後継者を育成し、また多くの展覧会の審査員を勤めた。その一方で、自らの画業の研鑽を怠ることはなかった。Photo
  展覧会のポスターにも用いられた「斑猫」(1924) がある。栖鳳は、猫に限らず動物を描くことを好んだようだが、なんでもない普通の猫を描いてその動き、その動物の心理、さらには匂いまでも感じさせるような、完璧とも思える描写を達成している。
  多くのスケッチ帳が展示されている。栖鳳は、若いころはきわめて精密なデッサンを多数残している。壮年期以降の円熟期に入ると、それがだんだん筆数を減らし、大胆に簡素化しつつも鋭く対象の特徴を捉えるようなデッサンに変わっていく。また、生涯にわたってきわめて精緻にデッサンを重ね、習作を繰り返して作品を仕上げていくが、その苦労の形跡のようなものを一切最終作品に残さない、というのも栖鳳の著しい特徴である。Photo_5
  「飼われたる猿と兎」(1908) は、鎖につながれた3匹の猿と、寝そべっている数匹の兎を並べたものだが、栖鳳は「なまじ賢い猿は飢えて、賢しくない兎はゆったり太る」という寓意である、と言っていたと伝える。
Photo_3  「驟雨一過」(1935) という作品がある。山中深く、木にカラスが2匹とまっている。ちょうど驟雨がひとしきり降り、その雨があがったところである。その湿気を含んだ空気の感覚、雨を凌いだ鳥の安堵感、雨を含んだ樹木、などの雰囲気が自然に伝わるような充実した作品である。
  「雄風」(1940) という作品がある。蘇鉄のしたに2頭の虎がいる。かすかに青みがかったグレーの背景のなか、蘇鉄の緑、虎の黄色と黒、そして輪郭線の黒が映える。静と動、墨色と彩色、写実と装飾、鋭い線とぼかし、などさまざまな対照的な構成要素・表現方法・手法が精密に盛り込まれて、そのそれぞれが見事に生きていて、眺めていて決して飽きることがない。私はこの日に観た作品のうちでひとつだけあげるとしたら、この作品を取り上げたいと思った。なんとも素晴らしい。
  水そのものを表現しようとした作品も何点かある。「水村」(1934) は、水墨画風にまったく彩色を導入しないで、敢えて絵の具を塗らない余白で、満々と湛えられた水を表す、とても美しい絵である。無彩色の表現能力の極みを試みたもののように思える。
  最晩年の作品に「しぐるる池」(1941) という作品がある。枯れた蓮の花に四十雀がとまっている。どうやら突然雨が降って、それがやんだ直後のシーンらしい。ここでも雨のあとの湿った空気感が静かに漂う。描かれた対象も、その色彩もとても地味である。しかし全体の雰囲気に沈んだ気配はまったくなく、凛とした明るさが感じられるのはなぜだろうか。なんでもない、華やかさもない対象を描くのに、不思議な、沁みるような魅力がある。Photo_4
  たとえば最新の日展などを観ていても、未だに洋画よりも日本画の方がそこはかとなく充実感あるいは画家の自信のようなものを感じたりすることがある。その遠因が、この栖鳳のような日本画の先輩たち・リーダーたちの、努力と研鑽によるものなのかも知れない。
  全体で110点ほどの作品が展示され、参考として60点以上のスケッチブックや写真・刺繍作品などもあわせて展示され、なかなか盛りだくさんの展覧会であった。鑑賞して消化するのに、多少多すぎるとも思えるが、われわれ美術に詳しくない者が見ても、十分伝わるような、「名作」ばかりであった。

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