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保存修復室ツアー 兵庫県立美術館 (3)

美術館のバックヤードの仕事 
  今回の見学ツアーは「保存修復室ツアー」と題されていて、修復が主となっているが、あわせて美術館のバックヤードの仕事についても紹介を受けることができた。
  まず美術品の調査活動がある。
  美術館では、さまざまな光学的調査を実施している。X線による撮影で作品完成までの製造過程の分析、作品完成後の履歴・修復歴の分析が行われ、今後の保全・修復の基礎データを収集する。X線以外に、紫外線による表面の検査、赤外線による主に炭素材料(墨やチョークなど) の描画の追跡、なども行われる。顕微鏡を通じての、作品表面の状態観察もある。
  大量の収蔵作品を管理し、また必要に応じて展示あるいは貸し出しするための日常管理もさまざまな作業を必要とする。絵画の画面の清掃、剥落箇所の接着、立体作品の埃払い、部分洗浄などがある。
  展示の準備、あるいは収蔵作品の貸し出し出荷などは、建設工事現場に近い慌ただしさと危険のなかで行われる。大型作品の開梱、移動、設置、それにともなう会場の、壁や照明、さらには空調をも含む模様替えが必要である。
  美術作品の輸送には、厳重な梱包が必要となる。従来は、それぞれの作品ごとに毎回梱包材料を制作していた。材料は木材・ベニヤ板・厚手の段ボール紙などである。しかしコスト・時間・手間が大きいので、最近は一部で美術品専用のトランク状のケースが用いられる。堅牢で機密性も高く、繰り返し使用できるので有効であるが、高価で保管場所を要する、輸送時に相対的に大きなスペースを占有する、などの欠点もある。
  そして、美術館の日常的な環境管理が大きな仕事である。美術館の会場および保管庫は、一年を通じて気温21~25℃、基準値22℃、湿度50~55%、基準値53%を維持している。このため、毛髪式の自記温度・湿度計と、コンピュータに取り込むための自動連続温湿計とを併用している。
  美術館の収蔵倉庫と展示室の「虫害」への対処も、保全問題として大切である。ゴキブリ・紙魚のほかにも、美術作品にとっての害虫が存在する。展示室の各室に計50箇所、収蔵倉庫を含むバックヤードに計80箇所に、虫のトラップを配置し、毎週チェックして顕微鏡で調査しているらしい。黴(かび) も美術品の大敵である。これは環境管理で湿度56%以上にしないこと、部屋の部分的にでも湿度が上がりすぎないこと、が重要とされる。
  今回は、美術品の修復のみならず、バックヤード全般にわたる美術館の裏方の仕事について見聞する貴重な機会であった。われわれは何気なく美術館を訪れて、美術作品を眺めるだけであるが、その快適な環境を提供するために、蔭でこのような大変な手間ヒマ・労力を必要としているのだ、ということが理解できた。

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