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「夢見るフランス絵画」展 兵庫県立美術館 (1)

  日本のある美術蒐集家のコレクションを用いて、このたび兵庫県立美術館で「夢見るフランス絵画 ― 印象派からエコール・ド・パリへ」と題された展覧会が開催された。桜が終わり新緑の季節がはじまろうという快晴の一日、家内とともに鑑賞に出かけた。

印象派とその周辺の画家たち
  第1章として「印象派とその周辺の画家たち」というコーナーがある。最初に登場するのは、アルフレッド・シスレーで「サン・マメスの船着場」(1885) という作品である。パリ近郊のセーヌ川とロレーヌ川が合流する付近の風景が描いたものだ。印象派特有の絵の具を混ぜない技法で描かれているが、湾曲する計算されたラインを基礎とする画面は、見る者の視線が自然に左上の画面奥に向かい、普通の遠近法ではないのに自然で深い奥行きを感じることができる。印象派らしい水面の光の輝きと揺らめきとともに、フランス郊外の風景の美しさをナチュラルに見事に表現している。
  クロード・モネの作品も4点ある。「エトルダ、夕日のアヴァル断崖」(1883) は、観光名所でもある海に突き出た特異な形をした断崖と、その周辺の穏やかな海面、そして断崖越しに沈む夕陽を描いた作品である。古典的な絵画手法を駆使した量感・質感のある断崖と、その前面にひろがる穏やかな水面のゆらぎと光の輝きが美しい。「睡蓮のある池」(1919) は、モネの円熟期の作品で、数多い睡蓮の連作のひとつである。いつもながら、池の水面に漂う蓮の花と水面の光の輝きを美しく表現している。
Photo
  ピエール・オーギュスト・ルノワールの作品が7点ある。「タンホイザーの舞台」(1879) と題された横長の油彩が2点ある。いずれも特製の装飾的な額縁に装訂され、ルノワールらしい優しく暖かく美しい作品である。「宝石をつけたガブリエル」(1908) は、若い女性が鏡の前で装身具を選ぶところを描くが、薄い衣服をはだけた裸体である。腕や肩の形も、肌の色合いも、物理的な意味での写実ではなく、皮膚の色に青色・緑色などの寒色系も取り入れられているのだが、少し距離をおいて眺めると、外観の写実というよりも、若々しい生きた身体に流れる血液や、生きるエネルギーを如実に表すという意味での写実である。「美の職人」というに相応しい、堂々たる絵画である。
  「ド・ガレア夫人の肖像」(1912) は、功なり名をとげた晩年のルノワールが、お金持ちに依頼されて描いた大作の肖像画で、今回の展覧会のポスターにも選ばれているものである。描かれた夫人の衣服、周囲の家具、背景の絵画、などとても豪華なものばかりが登場する。ルノワールは、陶磁器の絵付け職人を経験していることもあり、高級工芸品に詳しく、こうした上層階級の人々が愛用するさまざまな装飾品・装身具のそれぞれの値打ちをよく理解していた、という。実際、夫人の周辺のさまざまな装飾品の詳細を、丁寧に忠実に描いていることがわかる。
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  アルベール・マルケ「ナポリ湾」(1908) は、パリ装飾美術学校でアンリ・マチスと同窓生としてギュスターブ・モローに師事し、フォーヴィズムを経験した画家が描いた港の風景で、背景にもベスヴィオス火山があり、前景には暗い色調で強いコントラストで描かれた漁船の群れがある。筆遣いには繊細なタッチというより、印象派と異なり、長いストロークで単純化して荒々しく表現しようとする傾向がある。画面全体にそこはかとない詩情が溢れているのも、この絵の特徴・魅力である。全体として少し暗いトーンの絵だが、私は美しいと思う。
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  そしてポール・セザンヌである。ここでは2点展示されている。「大きな松と赤い大地 (ベルヴュ)」(1885) は、セザンヌの地元の景観を描いた作品である。ベルヴュというのは「良い景観」という言葉としての意味をもつ実在するプロヴァンスの地名であり、セザンヌの妹夫妻が住んでいた場所だという。富裕であった妹夫妻が所有する土地に立つ大きな松の木を前面に配置して、その木の下から覗く町と遠くの山の景色である。丹念に思索を重ねつつ筆を置いて創作された絵であり、知的で戦略的な雰囲気が迫ってくる。「イル・ド・フランスの風景」(1880)も、セザンヌらしい形を頭脳で分解し再合成した思索的な絵である。

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