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ヴェネツィアの栄光と影 ターナー展 (4)

  晩年に近付くころ、ターナーはヴェネツィアをなんども訪れて、多数の作品を描いた。「ヴェネツィア、嘆きの橋」(1840) は、そのひとつである。観光名物としても高名な、壮麗な宮殿と、隣接する死刑囚をも収監する牢獄とを結ぶ連結橋である。ヴェネツィアの繁栄と迫り来る衰退とを描いた絵、との評があったそうである。
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  最晩年の作品には、具象的な対象物は影をひそめ、ターナーが追求した光と色彩が前面に現れて、20世紀以降の現在抽象絵画につながるような表現が目立つようになる。「湖に沈む夕陽」(1840-45ころ) は、ターナーが70歳ころの作品で、すでに空と水との境界も、光と空気の分界もほとんど消失している。ただまぶしい光と、その色彩が鮮烈に存在する。ターナーは、ここまで描いたのちに、さらに前景になにか建物とか、人物とかを追加して描こうとしたのかも知れない、との分析もあるという。
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  全体を見終わって、それぞれの作品の細かなことはともかく、ターナーという芸術家の概要はわかったような気がした。
  彼は、終生鉛筆による描写・水彩による作画を重視し、また継続した。彼は20歳以降には多数の油彩も手がけているが、その描写は、水彩のトーンに準ずるかのように、ごく薄い塗りと、意図的に彩度を落とした、しかし深い色彩が特徴である。もちろん、一部には表現のために特別に厚塗りを施した作品も例外的には存在している。
  色彩は、鮮度よりも感覚的な印象を重視しているようで、曖昧な色彩が多い。そして黄色や白をベースとし、全体に暗い感じの画面が多いのが特徴である。赤色もめったに使わないし、とくに緑色系の色彩がきわめて少ない。彼の場合、樹木や草を描くときも、ほとんど茶色系統の色彩が用いられている。海水や湖水の表現も、青色よりもどす黒い、あるいは白っぼく光った表現が多い。
  そして、なによりも景色・自然・遺跡などに対する執着的とも思える精緻な描写が特徴である。ターナーが、景色・自然・遺跡などのなかに、人間や生物の「生命」に相当するなにか霊的な存在を信じていたことは、まちがいないと思われる。
  そして、正統的な風景画を探求して、彼自身としてはきわめてオーソドックスに画業を進めた結果、ときとして周囲から見てきわめて思いがけないような斬新な表現を実施した。それは現代抽象絵画にもつながるような表現でもあった。しかしターナーにとっては、思い切ったこと、奇抜なことをやろうとしたわけではなく、あくまで正統的な風景画を追求した結果に過ぎないのかも知れない、と思う。
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