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チューリヒ美術館展 神戸市立博物館(3)

  フェリックス・ヴァロットンの作品は4点あった。ヴァロットンは、ナビ派に属し、また象徴主義的な木版画も創作したという。「訪問」(1899) は、人目を忍んで密会する男女が部屋に入ったばかりのところを、演劇のひとつのシーンのように描いた作品である。画面の両脇を暗くして男女の人物をきわだたせ、室内の赤や黒の強い色彩で不安感・緊迫感を表す。近代の小説などの挿絵に相応しいような絵である。「日没、ヴィレイルヴィル」(1917)、「アルプス高地、氷河、冠雪の峰々」(1919) は、いずれも優れた写実的な作品で、余計な飾り気がなく、薄塗りのシャープな油彩で、淡々と緻密な描写をしている。
  エドヴァルト・ムンクは4作品である。数年以前に「ムンク展」を観たが、それまで「叫び」だけで高名であったと思っていたこのノルウェーの画家が、実に多作かつどっしりした国民的画家であったことを知った。今回の展示作品も、いずれも堂々とした、品格の高い立派な作品である。

Photo

  表現主義の美術家として、エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー、エルンスト・バルラハ、マックス・ベックマンの3人の作品が展示されている。エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー「小川の流れる森の風景」(1925) は、風景画だが、画面は予め設計されて平面的に少し不自然な色彩で描かれ、樹木や草木の生命の神秘を表現している。このように、内省的に人間や生物の心理に立入り、感情を重視する表現を追求する表現主義の代表的な彫刻家として、エルンスト・バルラハがいる。彼の「難民」(1920) は、戦場あるいは貧困な生活などの苦難から必死に逃走しようとする農民の姿が象徴的に木彫刻に表現されている。マックス・ベックマンの「女優たち」(1946) は、寓意的な作品で、剣を持ち堂々と正面を向いて台本を読むひとりの女優と、そのすぐとなりに座る顔を覆い隠して後ろ向きに周囲から隠れようとするかのようにたたずむもう一人の女優が描かれる。彼は、人間を「人生という舞台を演ずる俳優」と見なしていたという。
  アンリ・マティスの作品は2点のみだが、「マルゴ」(1906) の思い切った女の顔の平面的描写とその顔色の朱色と赤の大胆な描き分け、画面の明るさのコントラスト、「バルビゾン」(1908) の思い切った画面の単純化と平面分割など、常に大胆で意表をつく表現の魅力は、いかにもマティスらしい。

Photo_2   パウル・クレーは4点の展示があった。音楽にも文学にも深い素養・知識を持ち、その高い教養に支えられた知的な作品は、具象的な作品も抽象的な作品も、華やかさはないが知性と品格に満ちている。「スーパーチェス」(1937) は、抽象画というよりも構成作品のようなタッチである。
  これらの他にも、単純そうでよくみると複雑な構成からなっていることがわかるピート・モンドリアン「赤・青・黄のあるコンポジション」(1930)、自然に音楽の響きが伝わってきそうなワシリー・カンディンスキー「黒い色斑」(1921)、徹底して余分なものを削ぎ落とした結果、細長い枯れ果てた姿となったアルベルト・ジャコメッティの彫刻群、自由な表現、精緻な描写、現実と夢想の思いがけない結合などで多彩で楽しく、かつ悲しく、印象的な作品を多作したマルク・シャガールなどがあった。
  全体で74点と、私の鑑賞能力にはちょうどよい程度の展示作品数であったが、近代絵画の主要な分野を勢ぞろいさせた贅沢で密度の濃い構成であったため、いささか消化不良の感覚が残った。とはいえ、これだけの世界的作品群を一堂に鑑賞できるのは、きわめてありがたい企画であった。
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