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三月花形歌舞伎 南座

  今回の三月花形歌舞伎は、ベテランが登場せず、若手のホープとされる役者たちだけでフレッシュな演技をテーマとする、という。最近AKB48元メンバーとの交際で有名となった尾上松也も一度見てみたい、などもあって、早春の一日京都南座に向かった。
2015

  最初の演目は「矢の根」という荒事の舞台である。舞台は正月、時代設定は鎌倉時代で旧暦であり、すでに白梅・紅梅が咲き誇っている。曽我五郎時致(そがごろうときむね)は豊かではなかったはずだが、舞台ではこぎれいな家に居る。五郎は、大きくて長い矢を抱え、豪快かつ懸命にその「矢の根」すなわち矢尻を砥石で研ぎ澄ましている。親の仇である工藤佑経を討つための、たゆまぬ準備である。そこへ大薩摩文太夫が年始の挨拶にきて、お年玉として縁起のよい「宝船の絵」を五郎に与えて帰っていく。それではひとつ良い初夢を見んと、その宝船の絵を枕に敷いて、五郎はしばしうたた寝をする。すると夢枕に兄の曽我十郎佑成(すけなり)が現れ、仇の工藤佑経に捕らえられたので、すぐに五郎に助けにきてほしい、と告げる。目を覚まし、驚きあわてて飛び起きた五郎は、家の前を通った百姓の馬を奪いとって、兄の救済に飛び出していく。
 主役の曽我五郎時致を中村歌昇が演じる。なかなかの熱演だが、まだ少しセリフが聴きにくいところがある。少し小柄だが、荒事を懸命に勤めていることがよく伝わってくる。
 二番目の演目は「鳴神」である。高僧である鳴神上人は、世継ぎのない天皇から皇子誕生の祈願を依頼され、無事霊験かなって皇子が誕生したが、天皇が約束を破って寺院を建立してくれなかったことを怒り、秘法によって竜神を滝壺に閉じ込めた。この結果、雨が一滴も降らなくなり、国中が旱魃に苦しむことになった。天皇は計略として、内裏一の美女「雲の間姫」を鳴神上人のもとに遣わし、美女の色香をもって鳴神上人を籠絡して、雨を降らせる竜神を天に解放せしめようとした。かくて雲の間姫は鳴神上人が住む滝壺のそばの庵に来る。思いがけず絶世の美女が来たことに人々は驚き、鳴神上人もついつい雲の間姫の肌に触れてしまって堕落し、姫の薦める酒に酔って眠り込んでしまう。雲の間姫は、鳴神上人が寝ている間に滝にかかるしめ縄を切り落とし、竜神を天に放つことに成功する。かくて天からは雷鳴と雨が降り注ぎ、一転して大地は水に恵まれた。目を覚まして姫に騙されたことを知った鳴神上人は、烈火のごとく怒り、その身体と着衣は炎となって脱兎のごとく姫を追いかける。
 舞台は、前半の鳴神上人と雲の間姫との軽妙でユーモラスなかけあい、そして終盤の雲の間姫がしめ縄を切り落とし目を覚ました鳴神上人が怒りに燃えて荒事に場面が変わるところが見物である。鳴神上人を尾上松也が、雲の間姫を中村米吉が、それぞれ演じる。米吉は、初々しくてとてもかわいい。松也もなかなかの熱演である。松也は体格もよくて、力強い演技ができるので、たしかに有望な若手のひとりだろう。
 三番目最後の演目は「流星」という舞踊である。七夕の夜、牽牛と織女が年に一度の逢瀬に出現する。そこへ流星が現れ、雷夫婦の夫婦喧嘩の報告をする、という設定である。夫婦喧嘩の経緯は地謡と「流星」の舞踏で表現される。雷の夫と妻、さらにその子雷と婆さん雷が登場し、それぞれに感情表現として雷太鼓をどんどこと叩く。この4つの雷の役を、ひとりの「流星」が冠をいちいち素早く取り替えながら舞踏で演じ分ける。軽妙でユーモラスな舞踏だが、バランス感覚と素早いターンを必要として、かなりの身体能力とエネルギーが必要と思われる。迅速で器用で長い舞踏で綴る舞台であり、主人公はまさに「流星」である。
 この「流星」を板東巳之助が演じる。丁寧で真摯な舞踏に対しては、つい最近の彼の父板東三津五郎の死も重なって、観客から盛大な拍手が起こっていた。この役者も、見かけはいささか地味だが、精進を続けて大成していただきたいと思う。
 全体に二度の休憩を挟んで3時間半という、いつもよりも1時間も短い舞台であった。しかしながら、キャッチコピーとおり若々しい役者たちの懸命でフレッシュな春らしい活気ある舞台を楽しめたと思う。
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