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大英博物館展 神戸市立博物館

  神戸市立博物館で「大英博物館展」が開催された。会期末であったので混雑が予想され、私は朝の開館直後を狙って入場したが、これは良い選択であった。見終わって午後になって展覧会場を出るころには、入り口に長い列ができていた。
  私はなんどか海外出張の機会に、ロンドンの大英博物館を訪れたことがある。毎回あまりに膨大な展示品数に圧倒され、ごく一部しか見ないで疲労困憊になって会場を去ることの繰り返しであった。それが、今回は会場のスペースの制限、そして日本への出張展示ということもあって、100点に限定して展示する、という。一見、ほんものの大英博物館の迫力をほとんど感じることができない貧相な展覧会を想像していたが、学芸員さんたちの誠実な努力のおかげで、きわめて精緻な解説が添えられた、充実した展覧会であった。
  冒頭には、古代エジプトの棺と、現代のアフリカ・ガーナの棺が数点並べて置かれている。古代エジプトの棺と現代ガーナの棺とでは、時期は2,600年以上もの隔たりがあるのに、工芸品としての印象は意外にもよく似ていることに驚く。
  120~140万年前の石器時代の「握り斧」がアフリカ・タンザニアのオルドヴァイ渓谷から発見された、という。一見、ただの石ころのかけらに見えるが、たしかにその形状は、よく見ると人工的な加工があることがわかる。よくもこんな微妙な石片を見つけたものだと、考古学者の眼力に驚き感心する。
  紀元前5,000~300年の日本の縄文土器が数点展示されている。わが国縄文期の土器も、少なくとも美術工芸品としては十分世界的水準であることが、あらためて認識できる。
  紀元前1,280年ころとされる古代エジプトの「ラムセス2世像」がある。まだ肖像表現としてはきわめて素朴である。しかし紀元1~40年の古代ローマ「アウグストゥス帝の胸像」となると、ルネサンス期のミケランジェロ「ダヴィデ」を連想するほどに、とても精密な写実的で美しい肖像となっている。その時代の彫刻家が「理想像」として創作したものであることがよくわかる。
  AD100~300年ころの「ガンダーラの仏像」は、きわめて控えめで地味ではあるけれども、美しい石像である。パキスタンのガンダーラ地方で発見されたこの石像は、当然ながらインド的であり、アーリア的な容貌であり、日本の仏像の容貌とはかなり異なっている。
  AD100~700年ころとされる南米・ペルーの「モチェ文化の壺」シリーズでは、やはり「座る戦士」が印象深い。小さな粘土像だが、力強さ、逞しさを満々と秘めている。やはりこれも、創作者の理想を造形したものだろう。
  時代がくだり、西暦1300~1400年ころのアフリカ・ナイジェリアの「イフェの頭像」は、説明によると「驚異的リアリズムの表現」の真鍮像とされている。しかしこのくらいの時期にもなれば、わが国においても多数の十分なリアリズム的表現がすでに成熟していたと思う。同じころの1515年の「デューラー作 犀」と題された木版画は、画家が実は見たことがない「犀」を想像で描いたものだという。たしかに哺乳類というより、爬虫類あるいは恐竜のような犀だが、まあ当時においてすでに犀の情報が、間接的にであれかなり入ってきていたということだろう。
  1650~1700年ころとされる色絵磁器「柿右衛門の象」は、同じような時期の世界の他の磁器と並べてみても、まったく遜色がない、むしろめだって優れた陶磁器の美術品であることがわかる。
  1800年ころのインドネシア・ジャワ島の影絵人形が数点展示されている。わたしはかつて、マレーシアのクアラルンプルの博物館で、マレーシアと周辺諸国の影絵人形を多数見学したことがある。当時のマレーシア・インドネシアにおいては、影絵芸術が隆盛しており、多数の個性ある影絵人形が創作されていた。水牛の角、革などを繊細に加工した人形であり、民俗神話につながる神聖な領域の芸術だったのだろう。
  19世紀のコーナーでは、当然ながらわが国の葛飾北斎「北斎漫画」が登場する。北斎の芸術が、当時のヨーロッパ美術界から注目されたのは当然である。同じころのフランス「バカラの水差し」もある。
  大英博物館の収蔵数からみれば、わずか100点ともいえる規模の展覧会であったが、展示作品数の少なさはまったく感じなかった。予想したよりはるかに充実した、密度の濃い鑑賞となった。
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