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映画『マネー・ショート』

  経済評論家がおもしろい映画だと推奨するので、久しぶりに映画『マネー・ショート』を鑑賞した。自宅にちかい近郊都市のシネマ・コンプレックスだったが、1日に夕方から2回のみのマイナーな上映スケジュールで、それでも広い観客席にほんの10人弱のごく寂しい客入りである。
  これは2008年9月に実際に発生した金融危機、いわゆるリーマン・ショックを描いた作品である。この淵源は1970年代の住宅ローンの証券化にはじまる。住宅価格が安定している限り、住宅ローン返済が滞ると担保の住宅を貸し手が取り上げ売却して回収できるので、住宅ローンは投資対象として信用性が高く、それを証券化した金融商品は格付けがきわめて高い安心できるものであった。折からの好景気もあって、こうした一見うまみがあるかに見える金融商品は爆発的に売れて普及し、社会の上層から下層まで、多様で多数の人々がこれを購入した。人気商品であったがために、この証券はどんどん売り払われ、やがて対象となる優良な住宅ローンは払底し、徐々に信用性が実は低い「サブプライムローン」と呼ばれる住宅ローンを織りまぜて商品化した証券が多数派を占めるようになった。それらは住宅価格が低落すると、貸し手は抵当の住宅を取り上げてもローン債権が回収できなくなった。住宅ローン証券の利益の源泉は住宅ローンの貸し手が稼げることであって、それが実現されるためには住宅の価格が上昇し続けることが必要である。その必要条件が失われてきたのである。その一方で、内容がどうであれこうして証券化によってカネがまわると景気が一層よくなる、いや加熱する。月日がたち、この証券を担保するはずの根本の住宅ローンが、じつはまったく信用のない、実質のないもので占められるようになった。
  しかし多くの人々は、金融関係従事者も含めて、その事実を知らない、いや無関心、いやいや関心をもちたくなかった。そしてついに化けの皮がはがれる日が到来して信用が一気に下落し、金融危機に陥った。これがサププライムローン危機、あるいはリーマン・ショックと呼ばれたものであった。
  このあやしい仕組みの証券の信用不安に、いち早く気づいた3組のひとたちがこの映画の主人公である。いまは小さな投資会社を経営する元精神科医、ドイツ銀行の銀行員と彼と組んだ大手投資銀行子会社の小グループ、個人投資家として零細に稼いできた2人の若者と大手銀行の元辣腕銀行員で今は有機農業経営者、と3つのグループの人たちは、データを詳細に分析し、住宅ローン市場の現場を地道に歩いて取材し、また投資銀行関係者や信用格付け会社に執拗に取材したりして、住宅ローン証券の危うさを知り、その暴落を確信するにいたる。そして近日中に価値が下落することを見込んで、大規模な空売りを仕掛ける。こうして3つのグループの人たちは、まったく相互に無関係・独立に、住宅ローン証券の「空売り」という一世一代の賭けに投じた。
  彼らの見込みとおり、住宅ローン証券の価値は下落をはじめるが、信用格付けはなかなか下落せず、大量の住宅ローン証券を抱え込んだ大手投資銀行も危機を隠ぺいして表に出さない。そうして時間が経過すると、空売りをしかけた3つのグループには、それぞれ「保険金」負担が嵩んでいく。こうして3つのグループがそれぞれ破産の危機に瀕する。しかしついに金融危機は到来し、3つのグループは大きな利益をせしめた。しかしそれは、多数の一般市民の甚大な被害をともなうもので、その成功は達成感をともなう歓喜の勝利ではあり得なかった。
  3つのチャレンジ・グループそれぞれに個性ある人物・性格を設定し、ユーモアと風刺を取り混ぜ、なかなかおもしろい作品となっている。なにより、金融のデリヴァティヴ商品がいかに形成され、普及し、蔓延するか、そのメカニズムが明快に説明される。経済評論家が推奨するのもうなずける。
 いま現在、中国でこれと同じような事象が発生しているのである。中国経済から影響を受けるわが国や諸外国にとって、事態は決してひとごとではない。
  これを鑑賞して、金融はなかなかむずかしいものだと改めて思った。金融デリヴァティヴ商品は、たしかにカネのめぐりを促進して景気を改善する大きなメリットをもつ。それぞれ個人が利益を追求する、追求したいのも、当然のことであり、簡単に否定できない。経済に有益な側面もたしかにあるが、その反面でネズミ講のように膨張するとかならず破綻する、という不安定性、賭博性をともなう。映画では、これを政府が法的に取り締まるべきだと主張しているようだが、現実にはどこで線引きしてどのように取り締まることが妥当か、判断はむずかしいだろう。
  2時間余りのなかに、簡潔にリーマン・ショックの本質を説明する、という一点だけでも、非常におもしろく、勉強になる映画ではあった。
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