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デトロイト美術館展 大阪市立美術館(5)

デトロイト美術館の危機と救済 
 デトロイト市は2013年7月、ミシガン州連邦破産裁判所に連邦破産法9条の適用を申請した。地方自治体としてアメリカ史上最大規模の財政破綻であった。
  デトロイト美術館は、1985年に創立された。創立当時は、アメリカの自動車産業は世界をリードしており、デトロイト市にあったフォード・ゼネラルモータース・クライスラーの世界的三大自動車メーカーが隆盛を極めていた。しかし実際は、すでにその以前から日本などの猛追を受けて、製造業としての体質はダメージを受け始めていた。徐々に市民のうち白人層が市外に出て行くようになり、自動車を軸とする産業の地盤沈下が進んで、ついに2009年からゼネラルモータース、ついでクライスラーが破綻した。政府も肩入れした企業再生の努力により、2010年代に入ると自動車製造業としてはかなりもちなおしつつあった。それでも自治体の債務超過は再生できず、2013年の破産手続きとなった。負債総額は2兆円弱にまでのぼった。市の統計によれば、子供の6割が貧困生活を強いられており、市民の半分が読み書きもできず、市内の住宅の1/3が廃墟か空き部屋だという。
  そこで少しでも債務を減らすために、デトロイト美術館の資産売却というアイデアが出た。資産評価によると、デトロイト美術館の収蔵品をすべて売却すれば、1~2兆円を得るという。年金受給の権利をもつ退職者など債権者たちが美術品は売却可能な資産であると主張し、訴訟団を結成して裁判所にデトロイト美術館売却を提訴した。彼らは、政治家はピカソよりもまず市民を守るべきだと訴えた。一方で、デトロイト市民の78%が美術品の売却に反対していて、売却に強く反対するひとたちも多かった。
  この深刻な危機は、最近になって世界中から寄付が集まり、豊かな収蔵品の資産を世界中の美術展に貸し出しすることなどで収入を得つつ債務を処理していく、というスキームが提案され、現在デトロイト美術館を潰さない方向で市の再建を図っているという。
  私は無責任なメディアや文化人が煽るように、なにがなんでも美術館を守るべきだ、という意見には与しない。市の財政が破綻するというとき、文化活動に費やす余裕がないのは当然である。人々の暮らしより美術が優先するはずがない。それと同時に、こうして世界中から寄付が集まり、世界中の「美術館を守りたい人々」の具体的行動で美術館が維持・復活することは、とてもすばらしいと思う。
  少し前に、大阪府の財政難から大阪フィルハーモニー交響楽団への公的助成や同じく大阪市からの文楽座に対する公的補助が廃止される、といった話題があった。万博公園にあった大阪府立国際児童文学館も廃館が決まった。そのときも一部メディアや「文化保護」を叫ぶ無責任なひとたちは、橋下府知事・市長を批難・攻撃した。私はそういうひとたちに全く同意しない。楽団や文楽を守りたければ、自ら身を削って維持・再建を実行せよ、といいたい。わが国は、かつての高度経済成長時代の感覚がいまだに残存するのか、財源をまったく頓着せず無責任に「文化擁護」などともっともらしい議論をするひとたちが多すぎる。
  今回の展覧会は、展示点数が52点と少なめであったけれど、どの展示作品も直接あるいは本やテレビを通じて間接的に観たことがあるような、きわだって有名・高名な作品ばかりであった。そういう意味ではポピュラーな作品中心で、新たな発見というイメージは少ないが、すばらしい一級品ばかりの展覧会であることはまちがいない。このような貴重なコレクションが、口先だけでなく自ら身を削るひとたちの努力によって守られたことは、美術ファンの端くれとして素直に喜びたい。
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