足立美術館 島根県安来市(7)
日本庭園(下)
回廊をさらに進むと、再び広大な枯山水庭を、こんどは遠くの山並みを借景として眺めることになる。さいわい今日は快晴で、庭の緑はいっそう美しい。もうすぐ紅葉の時期となるが、そのときは背景の山肌がきれいに紅葉し、庭園内の常緑樹の緑、そして枯山水の白との見事なコントラストができる。また真冬には、一面の雪景色となり、ちがった白銀の美が鑑賞できるという。
さらに回廊を進むと、こんどは「池庭」と名付けられた池の周囲を取り囲む中庭風の庭園に至る。この場所は、この足立美術館が開館した当時は玄関があったところで、玄関を入って最初に見る庭園がここであった。いまでは入館後奥に入り込んでもっとも奥の庭となっている。池には多数の鯉が遊泳して、私たちがイメージしているオーソドックスな庭園といえるだろう。
そして最後に行き着くのが「白砂青松庭」と名付けられた庭園である。この美術館の代表的コレクションである横山大観の作品のひとつ「白砂青松」をモチーフに、オーナーである足立全康が自ら心血を注いで設計した庭であるという。なだらかな白砂の丘陵に大小の松をアクセントをつけて並べ、その端には池を配置し、その池の奥には人工的な滝を造り、そこから渓流が流れ落ちて池を潤すように設えられている。多数の石は、鳥取県産の佐治石を用いている。赤松と黒松の絶妙な配置も見事である。
庭園も絵画のコレクションも、足立全康氏の鑑識眼の鋭さ、的確さを十分に示している。たった一代でここまでの芸術遺産を成したことには、心底敬服する。
大阪府の自宅からパッケージ・ツアーのバスに乗って、日帰り旅行という強行軍で足立美術館を訪ねたが、まずまず満足のできる鑑賞であった。またもう一度、ゆっくり一日がかりでこの美術館を訪問したいと思う。[完]
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足立美術館を拝観しました。日本の心を蘇させてくれ、よかったです。日本庭園は、日本一だとか、別次元の空間です。土産売り場では、日立金属安来工場さんのステータスブランドの安来鋼包丁を購入しました。
投稿: 森田 | 2017年6月10日 (土) 10時06分