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映画『博士と彼女のセオリー』

  2014年制作のイギリス映画『博士と彼女のセオリー』を観た。宇宙物理学者で「ビッグ・バン」で世界的に高名なスティーヴン・ホーキングの半世記を映画化した作品である。
  ケンブリッジ大学で物理学を学ぶ大学院生であったスティーヴンは、同じ大学の文学部大学院に学ぶジェーンと出会い恋におちる。しかしまもなくスティーヴンは、ALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症し、余命2年を宣告される。周囲が反対するなか、ジェーンはスティーヴンとともに生きることを決意し、二人は結婚する。身体の運動機能や発話機能がどんどん失われていくなか、スティーヴンはブラック・ホールやビッグ・バンに関する新しい理論や仮説を提案し、世界的に注目されるようになる。やがて二人の子供にも恵まれ、大変な苦労ながらも順調に見えた二人の生活であったが、過大な負荷に加えて子供をきちんとした環境で育てることがむずかしいなど、ジェーンのストレスは限界となる。そんななか、ジェーンの母の提案がきっかけで知り合った教会聖歌隊リーダーであるジョナサン・ジョーンズがホーキング家に出入りするようになる。そして、いろいろ想定外のできごとが発生して、ついに二人は離婚し、ジェーンはジョナサンと、そしてスティーヴンは看護士の女性と再婚する。
 ストーリーの主役は、やはりホーキング博士の妻ジェーンである。将来が見通せない絶望のなかでスティーヴンとともに生きることを選択し、命懸けで懸命にスティーヴンに尽くすが、生身の人間として主張すべきは主張し、自分の意志で行動し、徹底して自分の生き方を貫く強靱な人物である。結婚も、スティーヴンの命と引き換えに声を失う咽頭切開手術も、離婚も、いずれも常に決断はゆるぎない。彼女の決断力・行動力・忍耐力・実行力は、なみたいていのものではない。
  スティーヴンも、厳しい病気に見舞われ過酷な生活を強いられるが、ジェーンという優れた伴侶と多くの良い友人に恵まれ、ある意味とても幸運な人生である。ジェーンと出合えなかったとしたら、現在に至る70歳を超える寿命も、学問上の業績も、子供のいる家庭も、いずれも到底達成できなかっただろう。
  スティーヴンは学者として並外れた活躍をしたし、ジェーンも並外れた努力をして、ふたりで協力して大きな実績を残した。それでも現実の人生はきれいごとだけでは済まない、もっとドロドロした、生身の人間らしい部分が必ずある。この映画はそういう側面も真摯に描くことで、観るものにとってはむしろ清々しいリアリティを与えている。
  私はこの映画に垣間見える、科学や学問の長い伝統を誇るイギリスの大学や学会とそれを支える文化にも興味を惹かれた。
  映画として、なによりもスティーヴンを演じるエディ・レッドメインと、ジェーンを演じるフェリシティ・ジョーンズのすばらしい演技に魅了される。ひとつには、エディ・レッドメインはケンブリッジ大学美術史専攻の卒業生、フェリシティ・ジョーンズはオックスフォード大学卒業生であり、この映画の舞台であるケンブリッジ大学のような独特なアカデミックな舞台背景に自然にとけ込めるということもあるだろう。
 鑑賞のひとときは、実に密度の濃い2時間であって、想い出に残る良い映画であった。

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