ブリテン島周遊クルーズ (25)
グラスゴー プロバンド領主館
聖マンゴー博物館を出て、ガイドブックにある「プロバンド領主館」を探したが、すぐには分からなかった。ネクロポリスの方へ歩いたり、少しハイ・ストリート駅よりの別の教会の方まで歩いたりと少し迷ったが、ペットボトル入りの水を売る特設の売店で聞いた情報をもとに、ようやくたどり着くことができた。
この建物の前には、いわゆるイングリッシュ・ガーデンとも少し異なるきれいに刈り込まれた庭園がある。これは15世紀にこの付近にあった聖ニコラス病院の薬草園を想定して再建されたもので、「聖ニコラスの庭」という。庭の様式は、ルネサンス時代の庭園様式にしたがっていて、一部にケルト文化の影響もあるとされる。つい最近の2010~2013年に、植物の植え替えを行ったばかりだという。
さて、プロバンド領主館だが、3階建てで入り口はきわめて小さい。日本人の私たちでさえ、少しかがんで出入りすることになる。しかし入ってみると、中は意外に広い。
この建物は、1471年に建設されたもので、グラスゴー最古の家であるとされる。もとはグラスゴー大聖堂に勤務する、牧師が住む牧師館であつた。グラスゴー大聖堂が建設された当時は、この建物以外に40あまりの牧師館があり、このあたりは大聖堂の敷地内であった。それらは1550年代の宗教改革で、大部分が放棄され破壊され、あるいは民間の手に渡った。たったひとつ残ったこの建物は、1400年代スコットランドの住宅様式の、貴重な遺物となっている。
18世紀の史料によれば、この建物にはプロヴァンの領主を勤めたものが居住したことから、Provand’s Lordshipとして知られるようになったという。その後、富裕層の洋服仕立師、ビール醸造者などと所有者が移り変わり、1階を商店、2・3階をアパートに使用されたこともあったようだ。その後も所有者がさまざまに推移したのち、1906年この屋敷がグラスゴーに残る貴重な中世建築物であることを知るに至ったグラスゴー市民のグルーブがProvand’s Lordship協会をつくり、やがて所有者から買い取って文化財として保全と貸し出しや見学受付をするようになった。1978年、修復費用などの問題から、Provand’s Lordship協会は屋敷をグラスゴー地区カウンシルに譲渡した。
特段の宮殿でも寺院でも教会でもないごく普通の建物で、550年ほども昔の石造りの住居が今に残ることは、地震が多い日本では到底考えられない。さらに、スコットランドの人たちが、古い家屋を古い様式のまま使用することを好む性向があることが、このような文化財を今に残す大きな要因なのだろうと推測する。わが国にも江戸時代中後期の古民家が全国に少数ずつあるが、やはり大切に残せたら、と思う。
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