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サムエル・モリソン『アメリカの歴史』第2巻

 アメリカの1815年から1900年、独立戦争後の対英関係修復、国内政治の整備、インディアン政策、ジャクソニアン・デモクラシー、南北戦争とその復興までの時代、大統領でいうと、少し重複して第2代ジョン・アダムズから第24代グロバー・クリーブランドまでの時代である。
 イギリスとインディアンに対する戦いのヒーローとして輝かしく登場した英雄、第7代大統領アンドリュー・ジャクソンは、ジャクソニアン・デモクラシーをもたらした。ジャクソニアン・デモクラシーとは、エスタブリシュメント層や啓蒙的知識人層ではなくアメリカ人民の国民国家を基盤にして、かつ普遍的な価値のアピールではなく、アメリカ市民個々人の平等と尊厳への強いコミットメントに特徴づけられる。そして合衆国政府の役割は、国内のアメリカ人民の物理的な安全と経済的な安寧を保障することによって、国家の運命を成就させることにある、とする。アメリカでは、連邦─州─地方の結束が強まっていった。政治構造としては、急進vs保守、連邦主義vs州論、個人の忠誠vs地域社会の責任、の対抗関係が軸となった。
 モリソンは、アメリカのデモクラシーの預言者はトーマス・ジョンソンであり、英雄はアンドリュー・ジャクソンであり、大司祭はラルフ・ウォルドー・エマソンである、と述べている。エマソンは、たとえ自由な制度があったとしても、本人自身が物理的にも精神的にも自由でなければけっして解放されないとし、憎悪と偏見を捨てて、デモクラシーの帰結を考え抜くことが必須であると断言する。これは、現代にもそのまま通用する警告である。
 南北戦争は、奴隷制を否定して黒人奴隷の解放を目指したが、その実現は容易なことではなかった。人権や人道の見地から黒人奴隷の問題を指摘・糾弾することはたやすいが、解放された黒人たちが、生業にありつき、自立を実現することは容易ではなかった。一部の黒人奴隷を除いて奴隷解放を自覚的に望む黒人奴隷はごく少数で、多くの黒人奴隷が南軍に従軍した。1839年のアミスタッド号事件では、奴隷運搬船で暴動を指揮した黒人奴隷サンケは、逃亡に成功してアフリカに帰ると、今度は奴隷貿易商として身を立てた。アフリカのなかでは、部族同志が頻繁に戦い、勝者が敗者を奴隷にすることは、ヨーロッパ人の介入よりはるか以前から常態であった。事情を理解していたリンカーン大統領は、けっして最初から奴隷廃止を主張しなかった。結局、黒人問題は、緩和され改善されてはいるものの、現在にいたるまで解決はしていない。
 黒人奴隷の場合は、白人が形成した社会構造に順応する意志と指向性があった。しかし、インディアンは、白人の社会習慣、文化を全面否定して、けっして同化を望まなかった。その結果、インディアンの多くは白人と戦って殺され、生き残った人たちは手狭な居留地に収容されて生活することになった。人道的・人権的に問題を指摘するのはたやすいが、現実の解決は難しい。もとをたどれば、ほとんどの白人たちは、アジアの一部からヨーロッパに侵入・侵略した人種たちの子孫である。誰がどこに権利があるのか、議論は単純ではない。
 アメリカの西部開拓には、大陸横断鉄道の整備が甚大な貢献をした。しかし巨大な鉄道会社は、一方で賄賂・利益誘導をはじめ、さまざまな悪の張本人でもあった。アメリカの発展には、これら民間の活力と、それを支える膨大な移民、そして奴隷の、いずれも政府外の力の貢献が著しく大きい。
 ヨーロッパも同様なのだろうが、日本と著しくちがうのは、政治・社会・文化の全体にわたって、宗教、具体的にはキリスト教の影響がとても大きいことである。政治理念でも、初等から高等にいたる教育でも、アメリカでは宗教の存在がとても大きいことは、私たちもよく理解しておく必要がある。
 私がこれまで漠然とアメリカについて持っていたイメージが、実に貧しく表面的かつ断片的であったことを思い知った。

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