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佐藤俊樹『不平等社会日本』中公新書

 10年ほど前に、神田古書街の放出セールでなにげなく購入した新書であり、久しぶりに「発見」して読んだ。
 かなり大量のデータを数値的に解析して、半世紀余りの間のひとびとの学歴、収入、社会階層などについての状況と意識の変化を追跡し、日本ではすでに社会階層の世代間相続が定着しつつあって、「努力すればナントカナル」社会から乖離しつつあり、もはや「不平等社会」であり、「さよなら総中流」といわねばならない、と説く。
 データの解析にはそれなりの説得性があり、社会階層や意識の変化がある、ということは理解できる。しかし、問題はそれに対する原因・要因、変化の中味の分析、今後にむけた対策という議論になると、問題の把握の仕方、取り上げるべき要因の根拠、対策案の妥当性などにおいて、急に説得力がなくなる。
 「街を歩く人々の顔がずいぶん虚ろになった」、「そういう安っぽい自尊と自卑に私はもう飽きたのだ」というが、自らの説に他者からは「虚ろさや安っぽい自尊・自卑」と見られるような要素はないのか、なにか浅薄な上から目線のようにも見える。民間企業に対しては、昇進や職種転換や評価などにいろいろ「提案」する一方で、自ら携わる教育に対しては「教育改革で解決しようという見方自体が、想像力が狭くなった証拠」などと、読む側からすると、懸命に独りよがりな予防線を張っているかにみえる。
 さて著者が主に問題としているのは、所得格差とその世代間相続ということらしいが、この問題は実際には雇用・労働力の過不足と生産の国際的移転あるいは労働移民問題など、広範囲な要因がかかわり、広い視野で考える必要がある。狭い範囲の最適化・是正で政府や企業に改革を迫っても、到底埒があかないと考えられる。
 要するに、現状の問題をある側面から抽出して提示するまでは、ひとつの視覚として意味のある内容が書かれているが、全面的に受け入れ得るものではない。また複雑な事象の一部しか論じられていない。実際に民間企業で長年働いた者としては、企業にも本質的な問題は当然あるのだが、やはり学者という外部の人には問題の本質はわからないのではないか、とも感じてしまう。おそらくこの著者は、企業にいる人間は視野が狭くて本質を捉えることができないのだ、客観的な学者は視野が広くて問題を見通せるのだ、と思い込んでいるのだろうが、それでも腑に落ちないことは率直に納得できないのであり、説得性がないのである。

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