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京都南座顔見世興行 (下)

昼の部
 昼の部は、すべて一幕ものであったが、それぞれの舞台上演時間は長く、全体で途中休憩時間を含めてのべ5時間半の長丁場であった。
 最初の演目は、近松門左衛門作「輝虎配膳」である。越後の長尾輝虎は、仇敵甲斐武田家に仕える軍師山本勘助をなんとかして引き抜きたいと一策を案じ、勘助の妹唐衣が輝虎の家老直江山城守の妻となっているのを利用して、唐衣から勘助の母越路を呼び出し、手厚くもてなして息子勘助を自分の部下にしようと企てる。嫁たる勘助の妻お勝とともに来訪した老女越路は、輝虎の計略を察して、直江山城守が差し出す由緒ある衣も、主君長尾輝虎自らが給仕する配膳も冷たく拒否する。激怒した輝虎が越路に切りかかるのを、勘助の妻お勝が琴を奏でて諫め、ついに輝虎は越路を斬殺することを諦める、というお話しである。Photo_20191212065101
 実在の長尾景虎を輝虎に、直江兼続を直江山城守に、とそれぞれ名前を少しずつ変えてある。事件は、もちろん架空の作り話である。越路のきっぱりとした武士の女の立ち居振る舞い、激怒した輝虎が何枚もの白衣を脱いで片肌になる仕草、刀を振りかざす輝虎の前に琴を奏でつつ立ふさぐお勝の動作、などが見ものとなっている。輝虎を愛之助が、越路を秀太郎が、直江山城守を隼人が、それぞれ演じる。愛之助もいよいよ歌舞伎の中心的俳優になってきたという感じがする。
 二つめは、常磐津連中による「戻駕色相肩(もどりかごいろにあいかた)」である。江戸時代の天明期に作られた作品で、豊臣秀吉を真柴久吉、石川五右衛門を浪速の次郎作と、それぞれ名前を変えて登場させている。お互いの素性を知らない同志の駕籠かき二人が、禿芸妓を駕籠に載せ、街道端でひと休みの間にそれぞれの体験を披露しあう、という舞踊劇である。舞台のはじめの方で、このたび中村梅丸から初代中村莟玉(かんぎょく)となった披露の挨拶があった。満7歳のとき中村梅玉に弟子入りし、師匠に認められて10歳から梅丸を名乗り、このたび23歳にして梅玉の養子となり初代中村莟玉を名乗ることになったのである。「莟」とは、未だ花びらを含み込んでいるつぼみの状態を表わす名詞で、つぼみ、あるいは花蕊(はなしべ)のことを意味する。女形として、若さもあって可憐で美しい有望株である。
 三つめは、「金閣寺」である。江戸時代中期の歌舞伎・浄瑠璃作者中邑阿契らが合作して、宝暦7年(1757)大阪・豊竹座で人形浄瑠璃として初演され、翌年歌舞伎化された伝統的な作品である。本名題は「祇園祭礼信仰記」という全5段の義太夫狂言で、「金閣寺」はその4段目である。文字通り金色に輝く豪華な装置が、大ゼリに乗って上下する仕掛けがひとつの特徴で、この大ゼリは江戸時代にも装置を工夫して実現していたらしい。時代は戦国時代末期、足利将軍家に対して謀反を企てた松永大膳は、将軍の生母慶寿院尼を誘拐して、金閣寺の上階に幽閉していた。松永大膳は、金閣寺の天井に龍の絵を描いてほしいという理由付けを用いて、画聖雪舟の孫娘たる美貌の画家雪姫をおびき出し、関係を迫った。しかし許嫁狩野之介直信をもつ雪姫ははっきりと断り、そのため桜の木に縛り付けられる。時は桜の散る花吹雪のなか、祖父の故事を思いだした雪姫が、涙と花びらで足でネズミを描くと、絵から飛び出したネズミが縄を食いちぎり、雪姫は脱出する。大膳のまわりには、他に真柴久吉(羽柴秀吉より)、佐藤正清(加藤清正より)などが入り込み、それらが結託して大膳の陰謀を滅ぼすというお話し。大膳を演じる鴈次郎は、このたびの顔見世でも大活躍で、悪役の首魁、慈悲深い殿様、そして滑稽な醜女まで、多彩な役柄を安心感ある充実した演技でこなしている。座ったきりでセリフもわずかだが、87歳の藤十郎が慶寿院尼として登場している。
Photo_20191212065201  最後は、仮名手本忠臣蔵から「祇園一力茶屋の場」である。前にも、同じ仁左衛門の大星由良助で観たが、今回は隼人(二代目中村錦之助の子、26歳)・橋之助(芝翫の子、23歳)・千之助(孝太郎の子、19歳)など、若手が多数出ている。
 私は、歌舞伎の鑑賞をしばしばするようになって未だ日が浅いので、あまり偉そうなことは言えないが、この歌舞伎の世界も徐々に世代交代が着実に進んでいることを感じる。
 昼の部の客席には、花街総覧として京の舞妓さんたちが花を添える。今回は、残念ながら人数は多くなかったけれど、それでも京都らしさと年末の季節感を感じることができた。

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