兵庫県立美術館「超・名品展」(6)
第二次世界大戦までの昭和時代(下)
昭和に入ると、絵画と彫刻に加えて、写真や版画がより普及して美術の分野としての地位を確立するようになった。 安井仲治「公園」(1936)という写真作品がある。明治36年(1903)大阪市の裕福な商店の長男として生まれた。早くも10代半ば頃から写真を始め、大正11年(1922)には浪華写真倶楽部に入会し、写真展でなんども入選を果たし、また浪華写真倶楽部の代表格のメンバーとして活躍した。若くして関西写壇に欠かせない写真家であったが、さきの大戦最中の昭和17年(1942)、腎不全のため神戸の病院で38歳で早世した。 彼はアマチュアリズムを徹底して、初期のピクトリアリスムから、ストレートフォトグラフィ、フォトモンタージュ、街角のスナップにまで、自由に活動範囲を広げた。枠にとらわれず自由に撮影対象を選択し、それに対応しうる確実な撮影技術をもっていた。現代の代表的なプロ写真家である森山大道や土門拳も、安井を敬愛し高く評価している。
昭和期も戦後になると、金山平三、恩地幸四郎、田中敦子、草間彌生、片岡球子、佐藤忠良、篠原有司男などが登場するが、これらは別の機会になんども眺めたので、今回の記録としては省略する。
今回の展覧会は、「超・名品展」とあり、日本の近代絵画の歩みを100年にわたって回顧するということで、正直な気持ちとしてはさほど期待は大きくなかった。ただ、新型コロナウィルス問題で2か月近く全国の美術館が閉鎖され、久しぶりに美術作品を観ることができるというその一点のみで飛びついたようなところがあった。しかし実際に鑑賞に訪れてみて、とくに明治初期のわが国の西洋画草創期の画家たちの作品に感銘を受けた。オリジナリティとか、社会との関係とか、ダダイズムとか、マルクス主義とか、芸術としては当然大切な要因だとしても、いろいろ考える以前に、先ずはひたすら西洋の油彩という新しい技術、技能を習得することに、ひたすら職人的に邁進したころの画家たちの作品である。そんな初期でも、個人的な技術・技量はかなりの水準のものであった。そういう時期の日本人の能力は、とくに優れている。そんななかにも、図らずも控えめながら印象に残るオリジナリティが発揚したりする。私は自分自身で絵を描いたり彫刻を制作したりしない、いやできないが、観るだけでもこうして感銘を受けるし、至福を感じることもできる。

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