Christian Brose, ”The Kill Chain”,2020(27)
10.絶対的優位であり得ない防衛力(2)
いかに戦うか
また、戦うための準備だけでなく、いかに戦うか、という問題がある。Chris Doughertyの著書”American Way of War”は、アメリカが攻撃から防衛にmind-setを変更する必要を説いている。US Armyは、第二次世界大戦の後は、攻撃を中心に軍を考えてきた。そしてクウェート、イラク、アルカーイダなど、すべて遠くまで遠征して侵入して攻撃してきた。しかし同じことを中国にたいして実行することはむずかしい。しかもこのまま時間を無駄に費やすと、中国から攻撃を受けたときに防御することが難しくなる。そして対抗関係が不用意に加熱して暴走すると、ほんとうに戦争になるかも知れない。そうなれば、勝者のない戦争になる可能性は高い。中国が攻撃を仕掛けてきたときにはそのすべてを破壊し、敵の領地を出て攻めてくることを抑止する、それだけの潜在的軍事力を示すことで、敵の攻撃と戦争を避ける、それがアメリカ流の「戦わずして勝つ」である。そのためには、US Armyがそれに必要なすべての軍事力をそなえなければならない。
しかし競争は熾烈をきわめており、そのなかで悩ましいグレーゾーンができつつある。サイバー戦争である。
過去数十年間、アメリカは求められればどこにでも出て戦えるような準備をし続けてきた。しかしこれからは、US Armyはまったく違うタイプの軍をつくらなければならない。
①広い地域に分散可能な、多数の小規模システム
②容易に取り替え更新できる廉価なシステム
③多人数で大きく少数の兵器を動かすよりも、少人数で多数の小型の兵器を動かす
ただし小さくともよりインテリジェントで無人の兵器も比率が高い
④集中化されたネットワークのセンターより、分散され再編・再建が容易なネットワークで操作する
⑤ハードよりソフト重視のシステム
なお、小型・廉価を繰り返して説明しているが、数量的には従来に比べてはるかに増大するのであって、軍事費全体として縮小するものではないことを確認しておく。

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