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John P. Carlin "Dawn of the Code War"(7)

Introduction The Code War
4.インターネットがもたらす曖昧さ
 インターネットの発展で、世界はかつて経験したことのない複雑な脅威を経験するようになった。その脅威は、脅威そのものがアイマイで、今後ますますアイマイになりそうなものである。近代国家がこれまで何百年もかけてようやく確立してわれわれの社会に構築してきた国家の仕組み、法の体制のような基本的価値が揺るぎかねないのである。

(1)平和と戦争の境界線をアイマイにした
アメリカには180ページの”US Army laws of Land Warfare”と、ペンダゴンの1,176ページの”Laws of War Manual”がある。これらは、国際法、条約、協定に基づいて、戦争の暴力を合理的に抑制し一般人への影響を最小限にとどめるために作成されたマニュアルである。しかしインターネットは、国家の国民に対して、戦争と平和の境界線を超えたのか否かを不分明にしてしまった。ヴァーチャル・スペースで一線を越えたけれど実空間で戦争には至らない、というCyber Warを仕掛けられたら、どのように判断し対抗すべきなのか。
さらに、国家ではない主体たるISILなどのようなCyber Attackerも存在する。国家対国家としての法的協議も不可能である。
(2)公と私の物理的領域の境界をアイマイにした
冷戦までの世界は、国家が防衛すべき責任範囲は国家の領域として明確で、政府の管理領域provinceであった。しかしオンラインでは、これが国家の領域を容易に超えてしまい、国家権力の手が届かずに、安全・防護の責任を民間企業に任せざるを得ないことになってしまった。2015年オバマ大統領はシリコンバレーで「サイバーセキュリティーは、皆で分担しなければならない。莫大かつ多数のコンピューター・ネットワークは民間セクターの重要インフラであり、政府が単独で実施できるものではない」と述べた。
(3)国家と個人の活動領域の境界をアイマイにした
かつては国民国家Nation Stateが、組織を動員して蓄積した技術を駆使して先端的兵器をつくった。しかしオンラインの普及で状況は大いに変わり、今では大量破壊兵器を学生が製造できるようになった。サイバー空間に限っても、Morris Warmのように最初はCyberattackなど考えずにつくったソフトが、質の悪いウイルス・ソフトとして、武器として普及してしまったこともある。数十年前までは世界最大クラスの国のみができたようなハードあるいはソフトの武器が、豊かでない少人数のテロリスト集団で造ることができてしまう。
Cyberattackを受けた国あるいはグループが、なぜ、誰に攻撃されたのか、不明確で分かりにくいことは多い。永久に不明のままのことさえあるだろう。Cyberattackを受けた国は、いったい誰に対しているのかさえ分からないことも多い。
Henry Kissingerは「アイマイな提携関係にある個人が、野望をふくらませて行動できるとき、国家の正当性の定義はアイマイになる」と言っている。
(4)物理空間Physical Spaceと仮想空間Virtual Spaceとの境界をアイマイにした
かつては、クルマはクルマ、コンピューターはコンピューター、財務表はコンピューター内にあっても、現金は銀行の金庫に存在した。現代のCyberspaceは、物理的ハードウエア(PC、ネットワーク・インフラ)とソフトウェア(コード)と情報(データ)の各要素の組み合わせに存在していて、それぞれの構成要素の効力・価値は、その組み合わせに特定の関係なしには存在せず、相互に決定的に依存しあい規制しあっている。今後はいっそうどこまでが物理空間Physical Spaceでどこからが仮想空間Virtual Spaceなのか、ますますわかりにくくなる。たとえば金moneyは今や大部分は仮想空間Virtual Spaceにある。Bitcoinは仮想空間Virtual Spaceのみにしか存在しない。
(5)国家間の境界をアイマイにした
各国は、他国との法的な相違を前提に、日常の運用に必要な官僚機構をつくる。アメリカでは、CIAはアメリカ以外の国を、FBIはアメリカ国内を管掌する。しかしこの分担は、今や意味を失いつつある。テロは、遠い外国からインターネットを介してリクルートしたテロリストに指令してホームグローン・テロHome Grown Terrorismとなり、Cybercrimeは遠い外国からインターネットを介してWall Streetの銀行から大金を盗む。実行犯は、犯罪指令者の人物をまったく知らず、それまで犯罪に一切関係しなかった内気でおとなしいゲーム好きの少年だったりする。
(6)どんな情報を保護すべき秘匿すべきかの境界をアイマイにした
現代のインターネット社会では、かつてnational secret, personal secretと考えられなかったような情報までもが、武器になったりカネの元になったりすることがある。たとえば、政党の国際交渉記録、公務員のふるい人事情報、健康保険データ、映画スターがアマゾンで購入した買物リスト、など。セルラーフォンのGPSデータ、個人の健康データなども含まれる。
2016年アメリカ大統領選挙時のロシアのCyberattackでは、これらの類の大量のデータが駆使された。
 元来は、冷戦下の、とくに核戦争の可能性をも考慮したアメリカの生き残りのための手段として開発・導入されたインターネットが、いまや上記の6つの問題あるいは挑戦を受けるに至ったのである。アメリカ政府として、この問題あるいは挑戦に対する態度表明が必要となった。

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