John P.Carlin "Dawn of the Code War"(15)
第1章 The Rise of the Hackers
1.9.諜報intelligenceと犯罪crimeの扱いの問題
Cyberattackは、まず犯罪crimeとしての問題があるが、国をまたがる場合には国家安全保障national securityの問題を包含することになる。そして国家安全保障は諜報intelligenceと密接に関わっている。
アメリカ司法省では、諜報intelligenceと犯罪crimeのそれぞれの世界の境界線をどこに引くべきか、長らく問題であった。とくにテロリズムが対象となると、これは複雑な難題となった。司法省の内部でもSensitive Compartmentalized Information(SCI)として区別され、部署としてもSensitive Compartmentalized Information Facility(SCIF)として分割されていた。とくに2001年9月11日のアメリカ同時多発テロの対策・捜索において、諜報と犯罪捜索との情報共有ができないことは、著しい不都合を露呈した。
1978年成立した外国情報監視法Foreign Intelligence Surveillance Act (FISA)は、外国諜報裁判所Foreign Intelligence Surveillance Court (FISC) を規定する法律である。FISAは、電子的手段による外国への諜報活動が国内で行われるときに限っては唯一の法律として機能するものであった。CIAは諜報活動に関するかぎり、はるかに大きな自由度を持っていたが、国内での諜報活動のみはFBIの監視下にあった。
一般に、自由civil libertyと安全保障national securityのバランスは、自由社会のなかでは常に振り子のように揺れ動いている。FISAは、外国への諜報活動である限り国内での諜報活動を許可するとしてきたが、1990年代まではスパイやテロの訴求であってもFISCは諜報活動と犯罪捜査を明確・厳密に区別していた。これは、法的手段で国家安全保障を強化することをむずかしくしてきた面があった。
状況は2001年9月11日アメリカ同時多発テロで大きく変わった。これ以降ブッシュ政権と議会は、法規制と諜報活動の間の情報の隔離を取り壊しにかかった。一般人の自由の保護をベースにしつつも、テロ対策の面では法規制と諜報活動の融合は有効であった。
しかしCybercrimeについては問題が残った。サイバー犯罪Cybercrimeとサイバー諜報活動Cyber Intelligenceとの区別が残っていたのである。そこで著者はサイバー犯罪のみでなく、サイバー諜報をあわせて検討することを主張し実行した。すると、中国の問題が分かってきたのである。

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