2021年4月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  
フォト
無料ブログはココログ

« John P.Carlin "Dawn of the Code War"(37) | トップページ | 京都嵐山紅葉散策(1) »

John P.Carlin "Dawn of the Code War"(38)

第7章 The Guardians of Peace
7.4.アメリカ司法省の結論とSONYの対応
 1年前のイギリステレビ局の件は、一般には知られていなかったが、諜報機関とサイバー対策グループには周知の案件であり、それらも総合して犯人が北朝鮮であることは初期から目ぼしをつけていた。しかし証拠を集めて固める必要があった。
 ①プロファイリング、②ハッカーの行動の痕跡、③Technical Fingerprints、④諜報チームIntelligent Teamが協力し、さらに⑤追加的なディジタル証拠を加えて、情報を練り上げ、再構成し、証拠を確立した。こうして我々は、北朝鮮の仕業であることは自信をもって説得性ある論理で示すことができた。これらの証拠がためにおける確信と謙虚さと慎重さの重要性は、イラク戦争時のサダムフセインに対する大量破壊兵器開発の誤診への反省からきている。
 しかしSONYは北朝鮮の攻撃にたいして、どのように対応したらよいのか判断しかねた。俳優のジョージ・クルーニーは、なんとかSONYを支援したいと団結の嘆願書の回付まで行った。彼は、SONYだけが怖気づいているのではない、ほんとうはハリウッドが怖気づいているのだ、と主張した。しかしクルーニーの団結の呼びかけは成功しなかった。スタジオ、エージェント、企業のいずれもがSONYにエールを送れなかった。クルーニーは「今回の攻撃はSONYだけに向けられたものではない。この国のすべてのスタジオ、すべてのネットワーク、すべてのビジネス、すべての個人に対する攻撃なのだ。いま犯人からこんな攻撃を蒙って、表現の自由、プライバシー、個人の自由が脅かされているのだ」と書面で抗議した。しかし誰もSONYと一緒に戦おうとしない。クルーニーは、みんな次は自分が攻撃されるのではないかと怖がっているのだ、と批難した。作家のAaron Sorkinは、別途ニューヨークタイムズのop-ed (社説の横の署名記事)に「メディアはSONYを攻撃し貶めることで売れ上げを競うありさまで、メディアの使命を見失ってしまっている。これではメディアは加害者側に加担してしまっている」と書いた。SONYから漏洩された情報が、ゴシップの側面が強調されて軽蔑されたのである。ハッカー側は、読者のその戸惑いをみて、ハッキングが武器にできたことに味をしめた。アメリカ大統領と司法省としては、この件で北朝鮮の攻撃が結果として成功することを許すわけにはいかなかった。深刻な事態であった。
 さらにGuardians of Peaceから、もし映画を公開したら、大変なことになるぞ、と重ねての脅迫のメッセージが届いた。これに対して、クリスマスに大々的に封切りすることを当初約束していたアメリカ全土の映画館が、上映を取りやめると言い出した。結果として、SONYと映画館のネットワークの両方が、世間から批難されることになった。しかしSONY Pictures幹部はそのまま引き下がらなかった。なんとかしたいと考えていたアメリカ政府の同意を得たうえで、独自に映画館の一部に個別折衝し、それらの映画館とあらたにネットでのクリスマス公開を発表した。
 12月19日FBIは、ハッキングは北朝鮮政府によるものであり、SONY事件のすべての責任は北朝鮮政府にあると公表した。正式な起訴の準備の前にこのような発表をしたことは、FBIとしては前例がなく画期的なことであった。さらにオバマ大統領は、年末の定例スピーチでSONY事件について、SONYの状況に同情を表明し、SONYと行動をともにしなかったスタジオの対応について批判して、北朝鮮のアメリカの価値観への挑戦に対して明確に一線を画した。そして北朝鮮のCyberattackに対して、「戦争行為」という代わりに「サイバーの暴力行為Cybervandalism」と批難した。 Cybervandalismというコトバもしっくりしない人々がいる。Code Warの時代になって、伝統的な語彙が必ずしも十分に事態を表現できなくなっているのであろう。
 SONYは、結局オンライン配信で$40Mの大きな収入を得たが、その前に北朝鮮のCyberattackで蒙ったシステム損傷の修復に、そのほぼ同額を費やしていた。サイバー攻撃の被害は、けっして小さくはない。

人気ブログランキングへお気に召せばクリックください

« John P.Carlin "Dawn of the Code War"(37) | トップページ | 京都嵐山紅葉散策(1) »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« John P.Carlin "Dawn of the Code War"(37) | トップページ | 京都嵐山紅葉散策(1) »