Niall Ferguson,”The Square and the Tower”(4)
2.皇帝と探検家
(2)初めてのネットワークの時代
ユーラシア大陸では、14世紀に腺ペストが大流行した。それまでにか細いながら開拓されたヨーロッパとアジアを結ぶ通商ネットワークをたどって、腺ペストが4年間を費やしてゆっくり感染拡大した。このペスト流行で、南ヨーロッパの人口の75%、ヨーロッパ全土の人口の50%が死亡したという。
1500年ころ、ヨーロッパはネットワーク的な国家群、東アジアは専制的なヒエラルキー的国家群からなっていた。そのなかで、イングランドは相対的に自由度が大きく、商人は自分の財産を自分の意思で自由に使用することができた。東アジアでは家族的結合の専制的支配者がヒエラルキーを統治していた。専制的支配者たちは、戦略的に支配者同士で婚姻関係を構築し、家族・血縁ネットワークを構成した。イタリアのメディチ家(Medici)は、政治的エリートとして、商人・銀行家の有力者とも血縁を造り、経済的にも発展した。ラグサ共和国(現在のクロアチア・ドゥブロニク)のベネディット・コトルリ(Benedetto Cotrugli)は、豪商・古典的教養人として、政治とは慎重に距離を置きつつ国際的な血縁ネットワークを形成し、博学者のネットワークのマニフェストとして”The Art of Trade”を著わしている。

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