H.R.McMaster"Battlegrounds",2020.9(15)
2.Parrying Putin’s Playbook
2.4.ロシアの挑戦に屈しないために
ヨーロッパは、物理的のみならず心理的にも強靭さを復活させねばならない。EUの強さは、その参加国の強さで決まる。ヨーロッパの大きな国は、ヨーロッパをリードしなければならない。これから10年間は、とくにドイツとフランスの役割がヨーロッパだけでなく、環大西洋協力のためにも重要だ。
ソ連のもとから自由を勝ち取った国々は、ヨーロッパ文化を共有し、自由と開かれた社会を、ともに維持し護って行く断固とした意思が重要になる。クレムリンは、それは不可能で時代遅れになると考えている。ヨーロッパのリーダーたちと市民は、クレムリンが間違っていることを証明しなければならない。
ロシアがNATOやアメリカの軍事的反応を誘発する閾値以下の攻撃をしかけることが多いとはいえ、ロシアは強力な通常兵器も核兵器も持っているので、決して油断はできない。NATOの通常兵力も核兵力もともに、ロシアの攻撃を予防するために、引き続き重要である。ロシアがヨーロッパの軍事力を計算間違いして、もし行動を開始してしまえば、悲惨な軍事衝突が発生しかねないのである。
アメリカとNATO同盟国は、新しい核兵器を含めたロシアの軍事力に対抗できなければならない。
2.5.ロシアの反政府運動
真実と透明性は、防衛のための兵器と同様に、クレムリンの虚偽や惑わしを打ち負かすための重要な攻撃手段である。プーチンの虚勢は、彼の弱みと失いつつある力の反映でもある。不正な選挙で手に入れた支配は、老朽化しつつある。彼はいったん大統領を降りて首相となったうえで大統領に戻り、そうすることで憲法を遵守するかのようなふりをしたが、大きな抗議を被った。多くのロシア国民が、プーチンがなんども国を略奪することで大金持ちになっていることを知るようになったのに、プーチンは退職期限をせりあげた。2019年には、ロシアの都市部で抗議運動が定常化して、プーチンの人気は没落した。2019年秋の地域の選挙では、腐敗糾弾運動の弁護士アレクセイ・ナワリヌイAlexei Navalnyが「スマート投票」として知られる戦略を開発した。プーチンが率いる統一ロシア党の候補者に対して、その候補者を負かせることができると思われる対抗馬を全国から選び出してリストをつくり、プーチンに反対する意志のある人々に投票を促すものである。この戦略は成功し、全国で160人ものプーチン反対派を当選させた。プーチンはメディアを完全にコントロールし、反対派を制限したが、選挙結果は反政府運動に傾いた。プーチンはメディア、国会、裁判所、警察などを把握しコントロールした上、暴力的に運動を攻撃したに関わらず、プーチンやその取り巻きのSilovikiの財産を公表されたことで、ロシアの抵抗勢力はますます勢いづいた。反対派グループ、腐敗糾弾運動の組織、生き残ったジャーナリストたちへの支持は、Putin’s playbookを狙い打った抵抗となり、クレムリンの攻撃に対抗するものとなった。
2020年初め、ミハイル・ミシュスティンを首相にしたのも、プーチンの言いなりになるからだとされている。プーチンは、2016年パナマ文書の疑惑記事など、身辺の腐敗でもさまざまな醜聞がある。

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