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大英博物館「北斎」展 六本木サントリー美術館(3)

3.目に見える世界
Photo_20220704060401  セッションの名が「目に見える世界」と唐突に出されても、いささか当惑するけれど、この次のセッションが「想像の世界」として空想上の存在とか、歴史上の人物とか、北斎の活動した時代には実在しない対象を描くのに対して、ここでは北斎の活動した時代に実在するものを描く、という意味だと理解した。
 「諸国瀧廻り 和州吉野義経馬洗滝」(天保4年1833)は、吉野郡あたりの滝で、かつて源義経が馬を洗ったとの伝承がある滝を描いたものである。吉野にこんなに見栄えのする滝があるのかどうかは知らないが、滝の流れも馬を洗う馬子たちも、ともにデフォルメされながら、激しい滝のなかで丁寧に懸命に馬を世話する姿が表現されている。画面に清涼感を与えるのが、鮮明な藍色の水で、おそらく当時から入ってくるようになった外来のプルシアン・ブルーなのだろう。水の白色は、和紙の地の白色らしい。これも鮮やかに映えている。なんでもないような画題だが、北斎の手にかかると、ドラマティックな画面になる。
Photo_20220704060501  「飛越の堺つりはし」(天保5年1834)がある。飛越の堺とは、飛騨国と越後国の堺のことで、かなりの山間部であろう。橋の向こうの山の上に鹿のつがいがいて、空には橋の下側にまで雁がとぶ。これは相当高い場所なのだろう。かかっている橋は手すりもないとても狭い橋である。「目に見える世界」なのかも知れないが、この絵の橋は、到底現実的な橋ではない。この見るからに不安定な橋の上を、薪を背負った男と、風呂敷堤を持った女が渡っている。橋は重みで大きくたわんでいる。とても険しく厳しい環境を表現したいのだろう。画面奥に聳える山や橋の両側の山の表現はかなり抽象化されている。こんな絵は、いかにも当時のヨーロッパの芸術家が注目しそうだと思う。
 これらの他にも興味深い絵が並ぶ。「ゑちぜんふくゐの橋」は、当時越前(福井)に実在した九十九橋という、橋を木と石とで半々に分けて作られた珍しい橋を描いた作品である。川が氾濫したら木製の半分が流されて難を切り抜け、残った半分の石橋部分に、壊れた木製部分の半分を補填・修復して、より短時間・低コストで水害に対処するのだとか。橋の上を大勢の人々が行き交い、活気のある様子が表現されている。人物の衣服や包みには版元永寿堂の紋がちゃっかり入っている。
 また特異なものとして「地方測量之圖」(嘉永元年1848)がある。これは当時幕府の重要な仕事となっていた測量作業の教本として描かれたものだという。ここでは諧謔性はない。
 風景でなく、花や鳥を描いたものもあった。もちろんこうした絵でも精緻な技能は現れているが、北斎の個性ではない。

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