安倍元首相銃撃事件とマスコミ
2022年7月8日午前11時半、奈良市近鉄大和西大寺駅前で参議院議員選挙の応援に来ていた安倍晋三元首相が、41歳の男に手製銃で暗殺された。この事件をめぐって、政治家や選挙候補者たちの多くは、テロ行為を非難して安倍氏に哀悼の辞を表明した。
しかしこの事件そのものに対しては、いろいろなコメントが出た。
立憲民主党の小沢一郎は、参院選候補者の応援演説で「自民党の長期政権が招いた事件と言わざるを得ない」と語った。TBSの金平茂紀は、昨今安倍元首相の指導のもと、戦前と同じような状況ができてしまった、社会の状況が悪い方向に変わってしまった、と発言している。やはりテレビ番組でコメンテーターとして登場する青木理は、日本はこの数十年、格差や貧困が広がり、将来への展望を描けない焦燥感がひろがったのに、政治がこれに十分対処しなかった。こうした閉塞感や不安感・不満が治安を悪化させ、政治に対するテロが起きてしまうのは必然なのだ、と発言している。いずれも、このような事件は悪い政治によって引き起こされた、という論旨である。
これらに対して、大学教授・評論家の八幡和郎は、安倍元首相に対して、特定のマスコミや「有識者」といわれる人たちが、テロ教唆と言われても仕方ないような言動・報道を繰り返し、暗殺されても仕方ないという空気をつくりだしたことが事件を引き起こしたのであって、犯人が左派でも右派でも個人的な恨みをもった人であろうが、精神に障害を抱えた人であろうが、それが許されると思わせた人たちこそが責められるべきである、と述べている。アゴラ言論プラットフォームを主宰する池田信夫は、いわゆるサヨクの人びと、たとえば大学教授・山口二郎がYouTubeで堂々と「叩ききってやる」と罵って恥じないとか、朝日新聞がモリカケ問題、花見問題、などをはじめとする結局なんの決めてもない長ったらしい無意味な罵詈雑言を続けるなど、根拠のない悪意ある誹謗中傷を重ねて、安倍元首相に対する憎しみを懸命に煽ってきたことがこのような風潮をつくった。それでも現実として安倍氏は、選挙には勝って長期政権を達成してきたのであって、それをも否定するのは民主主義の否定に通じる、と述べている。
まあ、政治と政治家と、それに対する批判は、どこまでが妥当かという判断は、結局それを見て聞いて、国民それぞれが自分で考えるべき問題であり、ロシア、中国、北朝鮮などの共産主義の国々、あるいは韓国などのように、政治に対する批判を国が制限・抑圧するようなことでは、つまるところ今のロシアを典型とする大きな危険性を孕む、と私は思う。くだらない言論、程度の低い政治批判、馬鹿馬鹿しい発言であっても、その生息を許容することに意味があり、大切なことはそれをどう受け取るか国民の側の判断力が問われているのである。これまでの選挙結果などを見るかぎり、もちろんすべてがうまくいっているとは言えないが、わが日本国民は大きな失敗や、失敗の繰り返しはあまりしていないと思っている。
ただ、こうしたテロ事件が発生している一方で、テロを支援する、テロにシンパシィを表明する言論人の態度は、やはり許しがたい。上記に例示したなかでは、金平茂紀と青木理は、今年5月の重信房子の出所歓迎会に参加しているのである。重信房子は、直接日本人を殺傷してはいないかも知れないが、中東で多くのテロ事件とそれに伴う多くの殺傷に深く関与した人物であり、まぎれもなくテロリストである。言論人として、その出所を花束で迎えるような会合に自発的に参加するという行為が、なにを発信するのか、どのように理解されるのか、当人たちはわかっているのだろうか。私は、このような態度や行動は決して許容できない。
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