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ルーブル美術館展─愛を描く 国立新美術館(4)

キリスト教の神のもとの愛
 シャルル・メラン「ローマの慈愛、またはキモンとペロ」(1628)がある。Photo_20230531053801
 17世紀の画家シャルル・メランは、ロレーヌ公国(現在のフランス北東部)の首都ナンシーの出身であったが、主に当時の芸術の中心地であったローマで活動した。この絵をふと目にした時、白髪の老人が若い娘の乳房を吸う情景に違和感を禁じ得ないが、描かれているのは親孝行の行いである。これは古代ローマの著述家ウァレリウス・マクシムスの『著名言行録』(1世紀)における、父キモンと娘ペロの教訓的な逸話に基づいている。年老いたキモンは牢獄で処刑を待つ身で、食物を与えられていなかった。ペロは獄中の老父を訪れ、ひそかに授乳して栄養を与えたのである。この場面は、孝心(子が親に寄せる愛)の模範として古代美術に表されたのち、16世紀ルネサンス以降の美術で再び取り上げられ、キリスト教の慈悲の行いを表す図像の原型にもなったという。
Photo_20230531053802  ジョヴァンニ・バッティスタ・サルヴィ「眠る幼子イエス」(1640)がある。
 幼子イエスを優しく胸に抱き、清らかな寝顔をそっと見つめる聖母マリア。ほのかに憂いを帯びたその表情は、いずれ人類の罪をあがなうために十字架にかけられ、命を落とすことになる我が子の運命に想いを馳せているようにみえる。眠る幼子を抱く聖母像は、キリストの受難の暗示として、ルネサンス以降頻繁に描かれるようになった。17世紀イタリアの画家ジョヴァンニ・バッティスタ・サルヴィ(サッソフェラート)はこの画題で人気を博し、サイズや構図の細部を変化させながら、多くの作例を残した。見る者は、優しい感情を呼び起こすサッソフェラートの聖母子像に親子愛や人間愛の手本を見いだし、信心を強くしたのかもしれない。Photo_20230531053901
 ウスターシュ・ル・シュウール「キリストの十字架降架」(1651)がある。
 神は我が子キリストに、人類の罪をあがなうために十字架にかけられ、犠牲の死を遂げる過酷な運命を与えた。その意味でキリストの磔刑は、人間に対する神の絶対的な愛の表れとみなすことができる。この作品は、磔刑の直後キリストの遺骸を十字架から降ろす場面が描かれている。聖書の記述に従い、右からアリマタヤのヨセフ、聖ヨハネ、ニコデモの3人の男性がキリストの遺骸を運び、その足にマグダラのマリアが口づけしている。画面右の女性たちのなかには、我が子に向かって片腕を伸ばす聖母マリアの姿が見える。作者のル・シュウールは17世紀フランスの画家で、整然とした構図、明確な輪郭線、明快な配色を特徴とする古典主義様式を極めた。青と茶の対比に基づく落ち着いた色調と抑制された感情表現が、人々の深い悲しみをみごとに伝えている。

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