京都国際写真祭2023(8)
【2】堀川御池ギャラリー
ガレス・フィリップス Ligatures of Ivy
イギリス・ウェールズの写真家ガレス・フィリップスは、主にフォトブックやマケット(模型、雛型)の形で作品を発表している。フォトブックをオブジェや彫刻あるいはインスタレーションとして捉え直すことで、フォトブックの現代的な再定義を試みている。
今回の作品は、彼の実父の闘病生活を長年にわたって撮り続けてフォトブックにしたものである。
フィリップスの父は、1980年代のイギリスの脱工業化の波のなかで事業に失敗し、家族を経済的に支え保護することがかなわなくなったことで自らの殻に閉じこもるようになり、失敗への恐怖心と家長としての無力感に30年間にわたって苦悩しつづけ、ついにうつ病を発症した。さらに最近になって、生死に関わる重病の診断を受けた。
フィリップスは、この父親の苦悩と変化を、30冊のフォトブックにしている。父親の自宅での日常生活、家の周囲の自然環境を克明に捉え、より広範な社会的・経済的背景のニュアンスを伝えている。
フォトブックによるインスタレーションという形式によって、鑑賞者がページの奥深くへ分け入り、現代社会の状況に対して個人的レベルにまで思いを巡らせることができるので、この作品はフォトブックの領域を押し広げている、とされる。このプロジェクトは、まだ現在進行中であるという。
Ivyは蔦、ligatureは拘束との意なので、Ligatures of Ivyというタイトルは「がんじがらめ」というようなニュアンスなのだろうか。
なんらかのやむにやまれぬ問題提起があるのかも知れないが、自分のもっとも身近な肉親であり大切な人物である父親の深刻なプライバシーを、公表の対象にできるということが、私のような凡人には理解しにくいのが、率直な感想である。
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