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京都国際写真祭2023(9)

【3】二条城二の丸御殿 台所・御清所(上)
高木由利子 PARALLEL WORLDParallel-world1
 高木由利子は、東京に生まれ、武蔵美術大学でグラフィックデサインを学び、さらにイギリスのTrent Polytechnic でファションデザインを学んだ、フリーランスデザイナーかつ写真家である。ヨーロッパでの活躍が知られ、撮影地は日本を拠点に、アシア、アフリカ、南米、中近東に及び、現在も撮影旅行を続行しているという。写真家として独自の視点から、衣服や人体を通して「人の存在」を撮り続けている。
Parallel-world2  今回の展示のタイトル「PARALLEL WORLD」とは、民族衣装で生活する人々とファッションデザイナー/クリエーターたちが創生する新しい価値を身に纏う人々との同時並行という意味である。
裸で地上に発生した人類は、神によって身体を包み込み護る布と衣服を創る技を与えられた。衣服は、やがて民族・性別のアイデンティティとなり、社会的地位を象徴する重要な存在ともなった。
 民族衣装は、民族の象徴として、また生活様式や技法に直結するものとして蓄積され、衣服の原点、インスピレーションの源となった。しかし、民族という意識が国家という大きな規模になり、あわせて生活形式が変容していくと、民族衣装を日常的に着る人々は急速に減少してしまった。
 その一方で、ファッションデザイナー/クリエーターたちは常に新しい試みに挑戦を続け、素材も美も機能性も著しく進歩した。人類の新しい夢を創生した。このふたつの並行する世界PARALLEL WORLDの動きは、いずれも必然性があり、いずれもかけがえのない大切なものである。このふたつの世界に入たり出たりしながら、ヒトと衣服の関係を通じて、衣服を纏う人間という存在、ヒトにとっての、とくにその幸福感について改めて考えてみたい、とするのが高木由利子の展示のメッセージである。Parallel-world3
 高木は、カラー写真を好まず、モノクロ写真にこだわっている。どうしてもカラー写真で、と要請されたら、暗室でモノクロを焼いたプリントの上に、手で色をのせて、人工着色写真で対応する、と言っている。高木のモノクロ写真は、観る者にみずから色彩を掘り起こさせるのか、ともかく魔法のように美しいのである。私は、昭和30年代までの日本のモノクロ映画にも、同じような美を感じることを連想した。
 コスチューム・アーティストひびのこずえは「服は着る人にとってもうひとつの肌である」という。高木の写真を見ていると、日ごろ衣服に無頓着な私でさえ、まさにその通り、と思う。高木が撮った世界各地の生活する人たちとその民族衣装を眺めると、民族衣装がそれを着るヒトに溶け込みへばりつき、まさに皮膚となって融合している。それを着るヒトは、必ずしも物質的に豊かでなく、必ずしも幸福そうでもないけれども、その地域に生きるという強い意志とエネルギーに満ちて、しずかな誇りと内面からにじみ出る美しさを感じさせる。

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