「少女たち-夢と希望・そのはざまで」展(6)
徳永仁臣の落ち着いた西洋画
徳永仁臣(とくながひとおみ、明治4年1871~昭和11年1936)は、備前国和気郡藤野村(現和気町)に生まれた。幼少期から絵画に興味を示し、岡山で松原三五郎の天彩学舎で洋画を学んだ後、上京して二世五姓田芳柳の門下となった。また画塾審美学舎を開設して後進の指導にあたる一方で、朝報社で画報部主任として肖像や相撲の挿絵などを描いて活躍した。明治44年(1911)、40歳にしてようやく渡欧を果たし、パリではアカデミー・ジュリアンでジャン=ポール・ローランスに師事し、明るい色彩による印象派風の作品を学び制作した。
大正12年(1923)関東大震災に際しては、被災地の惨状を伝える25点の油彩による大作を制作して「移動震災実況油絵展覧会」を組織し、巡回展を行うことで被災者のための義援金を募った。晩年は富山に移住し、立山や黒部峡谷といった自然風景や日本画などを描いた。
「赤いターバン」(1912ころ)は、パリ滞在時の作品とされる。40歳を過ぎてから渡欧したこともあってか、フォビスムやキュビスムなどのヨーロッパ絵画の最先端を追いかけるというより、当時としてはすでに定着していた印象派のような画風となっている。
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