キュビスム展 国立西洋美術館(12)
キュビスムと第一次世界大戦(下)
ピカソ「輪を持つ少女」(1919)がある。
ピカソやブラック、グリスといったキュビスムを代表して牽引してきた画家たちの作品も第一次世界大戦の後、「秩序への回帰」とよばれる保守化の傾向のなかで変化をとげた。パピエ・コレのような戦前の複雑で実験的で難解な試みは遠ざけられ、伝統的な技法による絵画に復帰してきた。テーマも、静物や古典的なものへと向かっていった。
ここでは、おだやかなキュビスムともいうべき、控えめの分解と再合成、安定した平面的描写とともに、十分具象的で古典的な描写の背景などが合体し、全体として保守的で静謐な雰囲気の絵となっている。キュビスムの要素はあるものの、挑戦的なエネルギーや躍動感というより、大家としての落ち着きや安定感が際立つしっとりした作品である。
アンリ・ローランス「果物皿を持つ女性」(1921)がある。
ローランスは、石工として修行した後、1911年にブラックと知り合いキュビスムを知り、生涯の友となった。足に障害を持っていたため戦時中も徴兵されずパリにとどまった。ピカソの影響を受け、パピエ・コレや、木や金属板で構成するキュビスム彫刻を制作した。1918年12月レフォール・モデルヌ画廊で初の個展を実施した。以後、画廊主のレオンス・ローザンベールが推進する秩序や伝統を重視するキュビスムの新たな展開の方向へ向かった。この作品は、細長い直性的フォルムに、彼が感銘を受けたシャルトル大聖堂の人像円柱の影響が表れている。テーマとしては、伝統的に「豊穣」を示唆する果物を持つ女性が表現されている。
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