「わたしのいる場所─みるわたし」兵庫県立美術館コレクション展(7)
3.女性と身体
イイタニ ミチコ「無題 ハイポイント・コンタクトより」平成5年(1993)がある。
イイタニ ミチコは、昭和23年(1948)兵庫県に生まれ、大学卒業後に単身渡米した。アメリカのシカゴ・アート・インスティテュート在学中から、アメリカ・日本・ヨーロッパなどで作品を発表した。
この絵にあるのは、まぎれもなくエネルギッシュな力強い肉体の表現だが、敢えて性別を避けているようだ。具体的な肉体の機能だけでない何かを表現しようとしているのだろうか。さらに、あわせて描かれる直線は、肉体や生物から離れた、空間の区切りとして、あるいは力強い運動の表現として、肉体とは対照的に印象づけられて描かれている。ちょっと不思議な絵である。
青木千絵「BODY 10-1」平成10年(1998)がある。
青木千絵(あおき ちえ、昭和56年(1981)~)は、岐阜県に生まれ、金沢美術工芸大学美術工芸学部を修了した彫刻家である。布、発泡体、ラッカーなどを駆使した独特の彫刻作品を制作している。
この作品は、スタイロフォーム(発泡スチロール)と麻布と漆を用いて、自分の肉体を表現している。しかし頭や顔は塊だけの造形である。不安定な人体を表現するのが、この彫刻家の特徴だという。「自分のなかにある得体の知れないなにかを、この素材で表現できると感じた」と語る。実存的な葛藤を表現するアルベルト・ジャコメッティの彫刻作品から影響を受けているとも語っている。
溶けだした塊のような上半身と艶のある漆黒の身体は、作家が自身の潜在意識と向き合うことの結果である。作家自身が自分の身体をモチーフとして不安定・不完全ながらも具象的な人体を表現することで、人間の内面、不安や悲しみ、あわせて力強さを、普遍的なものとして伝えようとしているようだ。
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