DIC川村記念美術館(6)
ジョゼフ・コーネルの小箱の世界
小型のコラージュ作品として、ジョゼフ・コーネル「無題(オウムと蝶の住まい)」1948年 が展示されている。
アメリカ生まれのジョゼフ・コーネル(1903–1972)は、ユニークな「箱のアーティスト」であった。エルンストやダリなどのシュルレアリスム芸術に感化され、1931年に自らコラージュを制作した。それ以後コーネルは、生涯を通じて両手で抱えられるほどの大きさの手作りの箱にお気に入りの品々を閉じ込めた作品を作り続けた。それらはコーネル自身にとって宝箱であり、同時に彼独自の世界観を表現するショーケースであった。
専門店で見つけた蝶や虫の標本が図鑑から切り抜かれた仲間たちと戯れ、その様子を二羽のオウムが隣でじっと眺めるこの作品は、一見して博物館の陳列棚のように整然として見える。しかし少し見方を変えれば、金網で仕切られ、捕虫網が壁に掛かったこの小屋に棲息するオウムと蝶は、異国に憧れを抱きながらも母と弟の面倒をみるため、住まいのあるニューヨークから一生離れられなかったコーネル自身の姿と重ねることもできる。
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