アンゼルム・キーファー:ソラリス展(6)
アンゼルムスここにありき
アンゼルムが若いころ、父の残した軍服を着て、ナチス式の敬礼をした写真作品をいくつも発表していたことはすでに述べた。その制作活動の展開として、19世紀初頭のドイツ・ロマン派の名画カスパー・ダーヴィト・フリードリヒの「雲海の上の旅人」という作品からヒントを得て、雲海ではなく海岸で海に向かってナチス式敬礼をする人物を撮った写真作品がかつてあって、それと同じ構図で森林に向かって立つ男の作品があった。
この展覧会でも、アンゼルムのその活動に関係する作品が展示されている。
「アンゼルムスここにありき 」(2024)は、人物は描かれないものの、そのシチュエーションを踏襲して、ナチス式敬礼する男が向き合う対象を描いている作品である。
ここでは海のかわりに、おそらくアンゼルムの故郷のシュヴァルツヴァルト(黒い森)を描いているのだろうと推測する。
アンゼルムの「異様」とも言える巨大な作品を展示する場所として、二条城は最適であった。最高権力者たる将軍の居所として建てられ、最後の将軍徳川慶喜はついにここを出て将軍職を行うことがなかった。展示会場と巨大な作品が、心地よい相乗効果を発現していた。
アンゼルム・キーファーは現代美術家の中でもとりわけ作品における「主題」「意味」を重視する作家であるとされる。コンテンポラリー・アートにおける表現主義的傾向を「新表現主義」(Neo Expressionism)と称するが、アンゼルムはアメリカのジュリアン・シュナーベルらとともに、こうした傾向の代表的作家と見なされている。
アンゼルム・キーファーは、私がこれまで観てきた画家・芸術家とは、その作品の物理的寸法においてだけでも驚異的な相違点があり、そのうえとりわけ哲学的、詩的であり、激しく思索・思想の表現を追求する、なかなか難しいアーティストであった。
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ブログを読ませて頂きました。私も近代美術は余り鑑賞していませんが、今後は近代美術も含めて幅広い芸術に触れて掛けていと思います。
徳川将軍の威厳をかけて造り、日本の歴史の転換期の舞台となった二条城でこの展覧会が行われているのは確かに相乗効果を狙ったものと考えられますね。
日曜美術館は私も時々観ております。展示会の情報等もあり、有難いです。
投稿: 荒牧 秀夫 | 2025年5月17日 (土) 06時51分