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文化・芸術

七月大歌舞伎 大阪松竹座

 大阪松竹座に七月大歌舞伎を家人と一緒に鑑賞した。午後の部で、3つの演目があった。
 最初の演目は「芦屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)葛の葉」である。陰陽師の安倍保名と、彼に命を救われた白狐の悲恋物語である。ヒロイン葛の葉こと白狐を、中村時蔵が演ずる。60歳を越えているのに、端正でかつ白狐の跳ね回る演技をみごとにこなすのはさすがである。さらに、家の障子紙に、泣く子をあやしながら「恋しくば たづね来てみよ和泉なる 信田の森のうらみ葛の葉」という歌を大きく墨筆で書く場面は感動した。なかなかの達筆で前段まで書いたあと、泣く子を抱くために右手が使えず、今度は左手で裏返しに「信田のもりの」と書き、次は泣く子に阻まれて手が使えず、筆を口に咥えて「うらみ葛の葉」とみごとに書ききったのは素晴らしかった。一流の歌舞伎俳優は、書道の嗜みも必要なのだ。20197
 つぎは、「弥栄芝居賑」という題名で、芝居町道頓堀を背景に、幹部俳優たちが一同に並んで、「関西歌舞伎を愛する会」結成40周年を祝う舞踊を交えた舞台挨拶である。まだ関西では歌舞伎がさほど人気がなかった昭和54年(1979)に、「関西歌舞伎を育てる会」という会が澤村藤十郎を中心に結成され、それがやがて「関西歌舞伎を愛する会」に改称されて、今年で40周年になるのだそうだ。この日松竹座の2回ホールに、40年間の主要なポスターがならべて展示されていた。40年といっても、そのうち30年は平成なのだ。平成時代が意外に長く、かつあっという間だったことを改めて感じる。私は最近10年余りまでは歌舞伎をほとんど知らなかったので、澤村藤十郎という歌舞伎役者は、かすかに名前のみ聞いたことがある程度で、ほとんど知らない。ただ、現在の白鷗である市川染五郎はよく覚えている。口上の中心は片岡仁左衛門だが、まだ舞台2日目ということか、珍しくなんどか噛んでいたのがほほえましい。
 最後の演目は「上州土産百両首」である。実はこの作品は、アメリカの短編小説家オー・ヘンリーの「20年後」という作品を、川村花菱が歌舞伎用の戯曲として脚色したものだそうだ。幼馴染で掏摸(すり)の兄弟分であった正太郎と牙次郎が、たがいに足を洗ってまともな人生を歩み10年後に再会しようと約束する。そして10年たって再会した二人は、殺人の凶状持ちと岡っ引き見習いという立場であった。正太郎は、掏摸から足を洗って腕利きの板前になったものの、昔の掏摸仲間から強請られて、思いがけずその相手を殺してしまう。牙次郎は、なにをやってもドジばかりだが、心根の優しい正直な人柄で、正太郎を心から慕っていた。正太郎を中村芝翫が、牙次郎を尾上菊之助が演じる。菊之助の演技と容姿は、なかなか魅力的であった。
 仁左衛門の芝居がなかったのは少し寂しいが、歌舞伎界も次々に有望な若手が出てきていることが感じられて、楽しい鑑賞であった。

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新作歌舞伎「NARUTO」京都南座

 京都南座に、家人と一緒に、新作歌舞伎「NARUTO」を鑑賞した。
 ちょうど1年余り前に「ワンピース」という、やはり人気マンガを歌舞伎にした公演を観たが、なかなか良かったので今回も観ることとしたのであった。Photo_55
 落ちこぼれの若手忍者ナルトが、ライバルでかつ親友のサスケと、協力したり対決したりしながら、忍者の  里を侵略しようとする悪の忍者集団と必死に戦い、忍者としてまた人間として逞しく成長していく物語りである。
 私たちは原作のマンガ作品を知らないので、物語の進行内容そのものがなかなかわかりにくいという難点がある。名前も普通の演劇で使用されるような名前でなく、またマンガの画面に類似した特殊な衣装とメークで登場するそれぞれの配役の区別も容易ではないことがある。そういういくつかの困難があるにもかかわらず、若手の魅力あふれる歌舞伎俳優たちのエネルギッシュな演技は、観ていて飽きることが無く、たしかに楽しめる。
 主人公ナルトを坂東巳之助、ライバルでほとんど主人公とおなじ重要度をもつサスケを中村隼人、悪の首魁マダラを中村梅玉が、それぞれ演ずる。終盤のナルトとサスケの目まぐるしい殺陣のカラミは見応えがあり、とくに滝の下でびしょ濡れで水しぶきの中で取っ組み合う場面は、若手俳優ならではの大変な重労働の演技である。ヒール役のイタチを演ずる客演俳優市瀬秀和も、なかなか魅力的である。
 観客席は、平日なのにほぼ満員で、人気の高い演目だということがわかる。西欧人らしい客もかなりいる。イヤホンガイドには、英語版もあるらしく、歌舞伎のためにはとても良いことだと思う。
 初夏の一日、延べ5時間あまりをすっかり堪能した。

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松竹演劇「三婆」

 大阪松竹座で「三婆」を家人と一緒に鑑賞した。昭和36年(1961)有吉佐和子原作で、若いころにテレビドラマや舞台中継として、テレビを通じて何度か見たかすかな記憶があるが、話の内容はほとんど覚えていない。
Photo_49    一代で大きな金融業を立ち上げた社長が、突然妾宅で亡くなった。実は最近彼の金融事業はうまくゆかず、大きな借金を残しての急死であった。その社長の本妻と、唯一の肉親である妹、そして妾の3人の中高年女性があとに残された。
 長らく自宅に寄り付かず寂しい思いをさせられた本妻は、当然妾を快く思っていない。妹は長らく身体が弱かったこともあり、初老の現在にいたるまで独身だが、住処を兄の借金の抵当に取り上げられて、本妻宅に押しかけてくる。肉親の妹として妻に劣らぬ相続権が、自分にはあると信じている。妾も住処を失い、自分が経営することになっている料亭の建築が落成するまでのひと月だけ置いてほしいと、これまた本妻宅へ押しかけてくる。互いにいがみ合う立場の3人の初老の女たちが、問題だらけの奇妙な同居生活をはじめる。
 本妻宅には、妙齢の女中がいて、これももはや身寄りのない本妻の幼女になって財産を乗っ取ろうと狙っている。みんなほんとうのワルではないが、人並みの欲にとらわれた人たちである。このややこしい女性たちを脇から支えたり調整したりできる唯一の人物が、死んだ社長の側近であった専務の重助であった。
 波乱続きの同居は数年続き、ついに同居解消と合意したものの・・・
 ストーリーの本質は、人間は憎み合ったり、嫌ったりしても、しょせん一人きりでは生きられない、嫌うのも十分意識しているからであり、誰も本心ではひとりきりになりたいとは思っていない、というごくありきたりのものである。演劇としてのポイントは、3人の老女たちの達者な掛け合いである。もしへたな女優たちが演じたら、おもしろくもなんともない、味気ない演劇になるだろう。しかし幸いにして今回の舞台は、死んだ社長の本妻を大竹しのぶ、妹を渡辺えり、妾をキムラ緑子 という錚々たる練達ぞろいである。この舞台の見ものは、偏にこの3人のベテラン女優たちのあの手この手の名演であった。
 脇を固める重助役の佐藤B助、女中役の三倉茉奈も、とても良かった。なんの難しいところもなく、只管良い女優たちの演技を堪能し、満足できたひとときであった。

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2019年度の高槻ジャズストリート (2)

高槻ジャズストリート 2日目
 京都にでかけての帰途、阪急高槻市駅の高架下の会場で、2つのセッションだけ聴いた。Photo_48
 まずはヴァイオリニスト牧山純子の演奏である。キーボードとドラムが適宜参加しての演奏であった。この人の演奏は、昨年の高槻ジャズストリートでも聴いたが、そのときはビッグバンドとの共演で、野外会場で風が強く、衣装や髪のみでなく、楽譜が飛び去るハプニングもあったが、なかなか充実した演奏であったことを思い出す。
 平原綾香の「ジュピター」、牧山純子自身のヒット作「ミストラル」、数年来彼女が力を入れているスロベニア共和国との音楽交流から生まれた「スロベニア組曲」から「風」、そして昨年6月の高槻直下型地震をスロバキア滞在中に知り、その直後に作曲したという「心の光」を演奏した。思い入れを非常に強く感じさせる情熱的なパフォーマンスで、ヴァイオリンの特性を生かして熱烈に歌い上げるような、とても魅力的な演奏であった。牧山純子は、クラシックをベースにして、ジャズには珍しいヴァイオリンを用いてジャズとクラシックを融合して、新しい音楽を創ることをめざしているらしい。この人はルックスにも恵まれ、品性も良さそうで、音楽も容貌が優れるとやはり有利だと率直に感じる。最後は「サニーサイドアップ」という、ヴァイオリンなのに手拍子が似合うように意図して作曲した、というオリジナル曲で快活に締めくくった。
Super  続くセッションは、風間三姉妹SUPER!という名のグループで、よくはわからないが、かつて劇画コミックとテレビで一世を風靡した「スケバン刑事」の風間三姉妹からとった命名のようだ。ヴォ―カル宮藤晃妃、テナーサックス西村有香里、キーボード大野綾子である。これにドラム三夜陽一郎、ベース西川サトシが加わっている。関西弁でよくしゃべる宮藤のヴォ―カルが軸だが、歌いだすと音域も声量も豊かで、エネルギッシュで迫力たっぷりの演奏を聴かせてくれる。女性には重すぎるのではと心配させるテナーサックスを抱えて、迫力ある演奏をする西村有香里も素晴らしい。私もよく知っているようなポピュラーな曲目も交えて、重量感溢れる充実したセッションであった。
 今年は、他の事情のため聴いたセッションは少なかったが、全体としてアタリに恵まれて、私の個人的には、少数精鋭の印象で終えることができて幸いであった。

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2019年度の高槻ジャズストリート (1)

  高槻ジャズストリート 1日目
 今年は21回目となる高槻ジャズストリートである。時間的制約から、ごく一部のみ楽しむこととした。Photo_47
 初日は、4つのセッションを聴いた。まずJR高槻駅西側のレンタル音楽スタジオWoooで加納星子クインテットの演奏を聴いた。いつもは加納星子のサキソフォンを軸にカルテットで活動しているそうだが、この日はピアノ、コントラバス、ドラム、パーカッションが加わってクインテットでの演奏であった。加納星子のサックスの演奏は、メリハリがありキリっと引き締まって、なかなか魅力がある。そしてきびきびしてエネルギッシュな高尾飛のピアノが良かった。演奏された演目は、いずれも私にははじめてのものであったが、心地よいリズムに乗せられて、身体を循環する血液が気持ちよく流れていくような感触で、きわめて気持ちの良いひとときであった。またこの会場は、音楽専門のレンタルスペースということで、決して広くはないが、音響機器の整備や調整が行き届いて、演奏者もやり易かったようだ。こういう場所が高槻にもあることを、私ははじめて知った。
Westtree   2つめは、JR高槻駅東側のジャズバーMarinnaである。ここでは、音楽専門学校で同期であったという2人、ギターの木曽義明とピアノの西口英生によるジャズである。2人がそれぞれ自作のナンバーを持ち、いずれも2人で共演した。ギターは主にアクセントを与え、ピアノは主に優しく全体を包み込むような演奏で、たった2人だが十分楽しめる美しい演奏であった。10年以上も一緒に活動しているというが、気心の知れた仲の良さそうな2人で、終始なごやかで気持ちの良い時間であった。Nhorhm
 3番目は、少し歩いて市役所まで行き、生涯学習センターのホールのセッションを聴こうとしたが、すでに満員ということで、代替案として人数制限がない野外会場である高槻市立桃園小学校グランドに移動した。ここでは西山瞳NHORHMという名のトリオを聴いた。このグループは、主にヘビーメタルのナンバーをジャズとして演奏するのが特徴らしい。西山瞳のピアノはもちろん、織原良次のベースも橋本学のドラムも完成度の高いプロらしい演奏で、安心感がある。野外ステージだが音量は十分大きく、運動場をぎっしり埋め尽くす大勢の聴衆も聴き入っていた。
91trio1  この日の最後は、高槻駅への帰り道、城北通り商店街にあるJKカフェである。これまで高槻ジャズストリートで、何度かこの会場に入ろうとして、いつも満員で果たせなかった。この日もなかば期待できずに覗いてみると、一つだけ椅子が残っていた。ここで聴いたのは、91Trio+1というおもしろい名のポップス・グループの演奏である。このグループのメンバーは、1991年生まれの器楽3人と、1997年生まれのボーカル1人の構成で、互いによく知り合ってはいるが、この4人の構成で演奏するのは初めてで、高槻ジャズストリートに対応した特別のものであるという。若いグループで、元気でエネルギーがあり、活気が漲るのが特長と言える。私もよく知っているナンバーがいくつか含まれていて、それなりに楽しめた。

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映画「8年越しの花嫁」

 岡山県に住むカップルに起こった実話をもとにした映画作品である。
 自動車整備工場に勤める尚志は、合コンで麻衣と出会い、結婚を誓った。その幸福の絶頂のとき、麻衣を病魔が襲った。「抗NMDA受容体脳炎」という珍しい重篤な病で、麻衣は昏睡状態に陥る。結婚を認め祝福していた麻衣の両親も、尚志に結婚を諦めるよう勧めた。しかし尚志はプロポーズ直後に予約した結婚式場を8年間解約せず、麻衣の回復を待っていた。
 病気のために二人を襲う繰り返す試練に、なんども挫けそうになりながらも耐えて、ついに8年後に車椅子生活ができるようになった麻衣は、尚志と念願の結婚式を実現した。
 ずいぶん古くから、病気と闘うカップルを取り上げる純愛ドラマがあり、私もいくつか観たことがあるが、それでも見るものに訴えるものがある。健康に大した問題がない、というごく普通のことが、いかに貴重でありがたいことかと思う。
 なにより主演の佐藤健の、朴訥で素朴な演技は秀逸である。彼はまだ若いのに、若さと美貌が主題の青春ドラマ、身体能力がカギのアクション映画、ある道一筋の職人の生涯の物語など、多彩な役柄を立派に演じ切ると思っていたが、内面の葛藤をしずかに表現する今回のような地味な役柄でも、じつに見事であった。土屋太鳳も、難病に襲われた不自由な女性の役を好演していた。この二人の俳優の魅力だけでも、観る側はじゅうぶん満足できた。

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「喜劇 有頂天団地」南座

 「喜劇 有頂天団地」が、新春の南座で上演された。「喜劇 有頂天旅館」「喜劇 有頂天一座」に続く、渡辺えり・キムラ緑子コンビが取り組む“有頂天シリーズ”第3弾として、小幡欣治の戯曲「喜劇・隣人戦争」をもとに、俳優・脚本・演出家であるマギーが松竹で初めて演出を担当する舞台である。
Photo 時代は高度成長期の昭和50年代、京都郊外の住宅地を舞台としている。環境がよいことで評判の高い住宅地の一角に、狭い敷地にミニ開発で軒を並べて6棟の戸建て住宅が新築された。そこに入居してきた新参の住民と、地元の古参の住民とのささやかな諍いから近隣住民の間に騒動が勃発する。先住者は、せっかくここまで大事にしてきた環境を新参の住民たちが乱さないか気になって、つい小言を申し入れて反発を買う。新参の住人たちも、お互いに外見や世間体を気にして、ついつい見得を張って、無理をしてしまう。それぞれの家庭内でも、どこにでもあるような小競り合いが起こる。ごく些細なことで、近所同士にいがみ合いが生ずる。それでもみんな、それぞれ懸命に働き、家族を大事に守って生きている普通の人々であり、結局は和解もできるし、助け合うこともできる。ごく普通の庶民の人情を、平凡な日常のなかにユーモアを含めて切り出している。
 いつもながら、渡辺えりとキムラ緑子の達者な演技に魅了される。どこまでが台本で、どこからがアドリブなのか判然としないが、自由奔放で快活な、観る者を圧倒するようなエネルギッシュな演技である。もちろんわき役も良い。
 テレビや映画にはない緊張感と臨場感と空気感をたっぷり味わい、じゅうぶん笑って楽しんだひとときであった。

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映画「坂道のアポロン」

 人気漫画の実写版だそうだ。1960年代の佐世保の町が舞台で、その高校に転入してきた薫は、家庭に事情があって親戚の家から学校に通う、医師をめざす少年である。薫は、同級生として不良少年風の仙太郎と、しっかり者の律子と知り合う。律子の家は町のレコード店で、律子の父は熱心なジャズ好き。その家の地下室は、実は父や仙太郎が溜まってジャズ演奏に明け暮れるアジトであった。偶然そこに来た薫は、それまでクラシック・ビアノをしていたが、ジャズに魅せられて、性格も生活態度もまったく違う仙太郎と親友になっていく。薫は律子に好意をよせるようになるが、律子は仙太郎の理解者でかつ好意をよせている。しかし仙太郎は年長の百合香に憧れ、百合香は大学で学生運動にはしる淳一に惚れている。ジャズの絆でむすばれた友情と、微妙に行違う恋愛模様が絡まって青春を描く。
 とくにきわだった独創性はないが、青春映画としては十分訴えるものがあり、劇のなかで演奏されるジャズの魅力もある。私たち団塊の世代は、登場人物とほぼ同世代に相当し、物語の舞台背景が懐かしいこともあって、しばらく見入ることができた映画であった。

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松竹新喜劇新春お年玉公演

 新開場なった京都南座の新春興行として、また劇団創立70周年を記念して、元旦から8日まで毎日2回の公演があった開催された。Photo
 松竹新喜劇は、喜劇の祖といわれた曽我廼家五郎が昭和24年(1948)他界し、松竹の名の下に渋谷天外(二代目)、曽我廼家十吾、浪花千栄子、曽我廼家大磯、曽我廼家明蝶、曽我廼家五郎八、藤山寛美等が集まって、昭和24年12月中座で旗揚げしたものである。私たち団塊世代にとっては、子供時代からテレビを介してよく観たものであり、名前を聞くと、おぼろげながら懐かしい風貌がふと脳裏に浮かぶ。現在は三代目渋谷天外、高田次郎、小島慶四郎、藤山扇治郎が中心となって、私たちはあまり知らない顔ぶれも増えたが、現代劇から時代劇に至るまでの、いわば伝統的な人情喜劇を上演している劇団である。
 茂林寺文福・舘直志作による「裏町の友情」一場と、舘直志作・星四郎脚色による「お祭り提灯」二場で、少しの休憩時間を含めて3時間弱の舞台であった。
 「裏町の友情」は、いまや半世紀前1970年ころの大阪下町を舞台に、高度成長の時流に乗って繁盛する洗濯屋と、その隣の時流に乘れなかった炭屋との、喧嘩友達同士の人情話である。先代以来の「犬猿の仲」の両家の口論のやり取りに、「ロメオとジュリエット」よろしく両家の子供世代の恋愛をかみ合わせ、大阪下町の人情を滑稽に演じる。
 「お祭り提灯」は、江戸時代の正月を背景に、実直な提灯屋徳兵衛が偶然拾った祭りの寄付金をめぐり、それを狙う町内一の強欲張り山路屋おぎん、寄付金の回収を願う町役人、それに丁稚の三太郎などが絡んで、善と悪との追っかけっこが、花道の駆け足での往復場面とともに展開する。山路屋おぎんを演じるゲスト出演の久本雅美の演技も、観衆の大喝采をあびて冴えわたる。
 いわゆるドタバタ喜劇が悪いというわけではないが、久しぶりに「正統派」ともいえる新喜劇を見て、おおいに楽しめた。

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アニメ映画「ザ・ブレッドウイナー」

 日本語版のタイトルは「生きのびるために」となっているようだ。
 舞台は、タリバンが実効支配するアフガニスタンの町である。主人公の少女パヴァーナが、イスラム原理主義をタリバンから強制され、本を読んでも、ブルカを着用せずに顔を出しても、ひとりで歩いても、物を買っても、すべてが禁止されて咎められる。男もほんのわずかのことでイスラムの教えに背いたとして逮捕され、殴られ、戦場に捨てられる。男手や親を失った子供たちは、自分で食べ物を手に入れなければ生きて行けないが、イスラム原理主義の制約のために、できることはほとんど残されていない。少女は、生きのびるために髪を切り男の子に変装して行動を始める。しかしタリバンの監視、戦争の災禍から身を守ることは、奇跡を追うにひとしい。
 アフガニスタンの現場で、実際に起こったことを当事者からインタビューを重ね、タリバン支配下の人々の生活の実態を描いた、ドキュメンタリー的要素の強いアメリカのアニメ作品である。
 かわいい絵から、そしてアニメ作品なので、つい子供対象の楽しい映画かと気軽に見始めたが、内容は重く、暗く、恐ろしい。なんとも感想を表わしにくいが、よくできた作品ではあるだろう。

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